いよいよ、11日引け後のアルコア決算で米4〜6月期決算の幕開けを迎えます。
4〜6月期決算を展望する前に、まずはファクトセットの力を借りつつ1〜3月期決算を振り返りましょう。1〜3月期の1株当たり利益は前年同期比6.7%減、売上は1.5%減でした。
1株当たり利益のセクター別動向は以下の通りで、%は前年同期比。
1位 裁量消費財 19.7%増
2位 通信 16.6%増
3位 ヘルスケア 7.1%増
4位 生活必需品 1.5%増
5位 公益 2.9%減
6位 産業財 5.3%減
7位 IT 5.9%減
8位 金融 12.0%減
9位 素材 14.4%減
10位 エネルギー 107.2%減
売上のセクター別動向は、以下の通り。
1位 通信 11.2%増
2位 ヘルスケア 9.2%増
3位 裁量消費財 5.9%増
4位 生活必需品 1.8%増
5位 金融 ±0%
6位 産業 2.3%減
7位 IT 5.0%減
8位 素材 8.6%減
9位 公益 10.3%減
10位 エネルギー 29.4%減
4〜6月期をめぐり、S&P500構成企業のうち113社が見通しを発表。そのうち71%にあたる81社がアナリストの1株当たり利益予想平均を下回りました。過去5年平均の74%以下にとどまっています。一方で、32社がアナリストの1株当たり利益予想平均を超えました。PERは16.4倍で、過去5年平均の14.6倍及び過去10年平均の14.3倍を上回る水準を保ちます。
1株当たり利益は前年同期比5.3%減であり、3月末時点の予想値である2.8%減より下げ幅を拡大しました。5期連続のマイナスとなる見通しです。2008年7〜9月期から2009年7〜9月期以来で初めて。セクター別では、以下の通り。1〜3月期と同じく、10セクター中で6セクターが減益を計上する公算です。個人的には、ITをはじめ海外企業のエクスポージャーが高いセクターに注目。BREXITで再びドル高基調が鮮明となり、一段と利益が圧迫されるリスクは否定できません。
1位 通信 7.3%増
2位 裁量消費財 6.6%増
3位 公益 3.8%増
4位 ヘルスケア 2.0%増
5位 産業財 1.4%減
6位 一般消費財 2.8%減
7位 金融 3.7%減
8位 IT 7.2%減
9位 素材 12.6%減
10位 エネルギー 77.7%減
売上見通しは前年同期比0.8%減となり、1株当たり利益と同じく3月期末時点の予想値0.5%減から広げました。6期連続のマイナスとなり、ファクトセットが2008年7〜9月期に集計を開始してから最長を記録しています。セクター別では、以下の通り。1〜3月期では5セクターが減収を計上しましたが、4〜6月期は4セクターへの減少が見込まれています。
1位 通信 11.0%増
2位 ヘルスケア 7.7%増
3位 裁量消費財 5.4%増
4位 公益 4.2%増
5位 生活必需品 2.0%増
6位 金融 1.5%増
7位 産業財 1.2%減
8位 IT 4.2%減
9位 素材 6.8%減
10位 エネルギー 27.7%減
業績リセッションは、7〜9月期までお預けとなる見通しです。7〜9月期になって1株当たり利益見通しは漸く0.8%増へ転じ、10〜12月期には7.3%増までの拡大が見込まれています。売上は7〜9月期に2.2%増へ転じ、10〜12月期に5.1%増まで回復する公算。さらに、朗報があります。S&P500構成企業のうち2016年通期の見通しを発表したのは135社で、そのうち46%に相当する122社がアナリストの1株当たり予想平均を下回っていました。ファクトセットが集計を開始した2012年4〜6月期以来、最低となります。
セクター別では素材が73%、ヘルスケアが66%、産業が64%とポジティブ見通し率高し。
(出所:Factset)
BREXITで蔓延する不透明性払拭のために、イングランド銀行をはじめ各中銀が追加緩和策を打ち出せばその効果も期待できる。企業の見通しに明るさが取り戻されつつあるなか、米株市場に一足も二足も早い春が訪れる可能性を念頭に入れて置きたいところですね。
ただし、仮に追加緩和が講じられても浮かれてばかりいられません。ドル高のリスクには、要注意。S&P500構成企業の売上のうち米国が69%、海外は31%を占めます。全体でこそ31%ですが、セクター別動向を紐解くと様相はガラリと変わってしまうんです。
(出所:Factset)
はい、特にITは海外が占める割合が59%と米国を軽く上回っているんですね。業績リセッションに入ってから全体の重石となっていた素材やエネルギーでは50%近くに至り、商品先物の下落に加えドル高が足を引っ張っていた実体が浮かび上がります。
(カバー写真:Dave Center/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年7月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。