IEA:中東原油への過度の依存を警告

IEAのトップであるFalih Birolが語った内容として、FTがさきほど掲題を伝えている(”IEA warns of ever-growing reliance on Middle East oil supplies” July 7, 2016 5:38am)。 つまり低油価により、需要を抑制しようとする各国政府の努力が実を結んでおらず、中東への依存度が高まっている、と。

気がつかなかったが、世界供給に占める最近のOPECの比率は、第一次オイルショック直後の1975年の36%に次ぐ34%になっているそうだ。

先進国諸国のエネルギー機関の長としての発言だということを理解して読んでも「なるほど」と思うところが多々ある。以下に要点を紹介しておこう。

過去2年間の低油価により需要が順調に伸びており、一方、高コストの米国、カナダ、ブラジルからの供給が減少している。この結果、中東への依存が増大しているのだが、この事実に政策決定者(policymakers)は無頓着になっている。

(米国などへの)禁輸を行った第一次オイルショックの後、1975年のOPEC供給シェアーは36%だったが、北海原油の拡大もあって(逆オイルショックが発生した)1985年には19%に減少した。だが最近は80年代半ばと異なり、OPECは価格よりもシェアー維持を重視している。

低油価によりガソリン多消費の自動車販売が増加しており、エネルギーの効率的使用や(CO2)排出量減少が妨げられている。米国ではSUV(Sports Utility Vehicle、スポーツ用多目的車)が普通車の2倍半売れており、中国では4倍も売れている。中国の自動車文化はアメリカ流になっている。過去10年間の石油需要増の中核であった中国は、今では米国に次ぐ世界第二位の石油消費国であり、昨年には米国を抜いて世界最大の石油輸入国となった。

Falih Birolは、最近の事態は「中東が低コスト石油の最大供給者であることを思い出させる」として、来るべき20年間の需要増の4分の3は中東によって供給されることになろう、と指摘している。

これらを踏まえ、北米のエネルギー供給量増加のため見落としている米国の政策決定者たちが経済外交政策を打ち立てるに際し、中東への関与を減少することなく、重要性を再認識して欲しい、としている。需要増が供給増を上回っているため、米国の石油輸入量は久しぶりに増加している。

Birolは言う。世界市場が中東原油の供給を完全に断ち切ることは現実的ではない。むしろ、需要を抑制するために、より厳格なエネルギーの効率的使用目標を打ちたてるべきだ、と。

そして次の言葉で記事を締めくくっている。
「米国の石油生産は増加するが、依然として輸入国であり、しばらくの間(for sometime)、輸入国のままだ」
「タイト(シェール)オイルが中東を脇に追いやると考えている人々もいるが、この見方に私は決して賛成しない」

なるほど。
パリ協定の具体化への各国の政策動向はどうなっているのだろうか?


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年7月7日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。