米6月ADP全国雇用者数と、米新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。
米6月ADP全国雇用者数は前月比17.2 万人増となり、市場予想の16.0万人増を超えた。2015年4月以来で2番目の伸びにとどまった前月の16.8万人増(17.0万人増から下方修正)を上回る。ただ、2015年の平均値20.7万人増には届いていない。2010年2月以来の増加トレンドは維持した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
ADP全国雇用者数、2011年以降の平均値以下が続く。
内訳は、以下の通り。
▽企業規模別
中小企業 14.7万人増>前月は14.4万人増、6ヵ月平均は14.3万人増
大企業 2.5万人増>前月は2.3万人増、6ヵ月平均は3.9万人増
▽業種別
サービス業 20.8万人増>前月は17.3万人増、6ヵ月平均は18.7万人増
(米6月ISM製造業景況指数の雇用は52.7と3ヵ月ぶりに分岐点回復)
・専門/ビジネス・サービス(派遣を含む) 5.1万人増>前月は4.7万人増、6ヵ月平均は4.3万人増
・貿易/輸送/公益 5.5万人増>前月は2.7万人増、6ヵ月平均は3.4万人増
・金融 0.2万人増<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
財生産業 3.6万人減、3ヵ月連続で減少<前月は1.3万人減、6ヵ月平均は0.5万人減
(米6月ISM製造業景況指数の雇用は50.4、7か月ぶりに分岐点を回復)
・建設 0.5万人減<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は1.4万人増
・製造業 2.1万人減、5ヵ月連続で減少<前月は0.3万人減、6ヵ月平均は0.8万人減
ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受けて「雇用の増加は春の落ち込みから回復した」と振り返る。エネルギーや貿易動向に敏感な製造業、BREXITの影響もあり大手多国籍企業はさえないものの「中小企業で力強い就業者数の伸びを示し続ける」と予想した。
▽米新規失業保険申請件数、4月以来の水準へ減少
米新規失業保険申請件数は7月2日週に25.4万件と、市場予想の前週の27.0万件を下回った。4 月23日週以来の水準へ減少している。米労働省は特殊要因を指摘しなかったがハワイ州をはじめカンザス州、が推計値とし、30万件割れは70週連続で1973年以来の最長とのコメントを寄せた。4週平均は26万4750件と前週の26万7250件から減少し、4月30日以来の低水準。1973年以来で最低を示した4月23日週の25万6000件に一歩迫った。
米新規失業保険申請件数、レンジ下限を快調に推移。
(作成:My Big Apple NY)
6月24日週までの継続受給者数は212.4万人と、前週の216.8万人から減少した。被保険者に占める失業者の割合が過去最低の1.5%から修正されたため、4週連続で1.6%だった。
6月24日週の州別動向は、以下の通り。
(増加が顕著だった州)
・ニュージャージー 6715人増(前週の3210人増を含め2ヵ月連続で増加)
・カリフォルニア 5163人増(前週の9526人減から反転)
・マサチューセッツ 3248人増
・ミシガン 2704人増
・ニューヨーク 1943人増(前週の2446人減から増加に反転)
(減少が顕著だった州)
・ペンシルベニア 2671人減(前週の2407人減を含め2週連続で減少)
・ウィスコンシン 1595人減
・フロリダ 1107人減
・サウスカロライナ 852人減
・オハイオ 660人減
――米6月ADP全国雇用者数と米雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)の乖離は過去2年間で8.4万人のマイナスです。逆に5月は、ADPがNFPを14万人近く上回り大幅な乖離をみせました。ただ5月は通信大手ベライゾンのストライキなど特殊要因に見舞われており、前月分の反動もあって6月は回復するのでしょう。ブルームバーグのエコノミスト予想平均では、17.0万人増となっています。ただ今回はBREXITの影響が十分に織り込まれたとはいえず、雇用統計は消化試合に終わる気がしてなりません。
(カバー写真:Savannah River Site/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年7月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。