天皇陛下の退位打診について思うこと

週末の早朝、皇室を紹介する長寿レギュラー番組があることをご存知でしょうか?日テレの「皇室日記」とTBS系の「皇室アルバム」、フジ「皇室ご一家」であります。バンクーバーで時折拝見させていただいております。皇室の動きを国民にきちんと紹介する意味ある報道ですが、まず大多数の方はその存在すら知らないかもしれません。「皇室アルバム」は1959年からの番組とのことですから日本で最も長寿な番組の一つなのではないでしょうか?

今上天皇は昭和天皇の難しい過去を引き継いだ意味において非常に困難なご公務をこなしてこられたと思います。また、社会が大きく変化する中で天皇家が大きく庶民の茶の間の話題になることもあり、昭和の初期の時代を知っている年配の方には様変わりを感じられていることかと思います。

今般、天皇陛下が退位を打診されているという皇室関係者からの話が漏れ伝えられ、大きな話題となっています。宮内庁はそれを否定しておりますが、これは当然の流れで「噂」を事実として認めることは宮内庁にとっては非常に都合が悪いのであります。宮内庁は格式と伝統と過去の踏襲が全てですので、すわ、そういう事態になれば当然ながら正式なプロセスを踏まざるを得ません。但し、宮内庁は事なかれ主義であり、あくまでも天皇家をお守りする側ですので宮内庁が能動的に動くことはないでしょう。

82歳の天皇陛下にお疲れが見えることが時々話題になっており、そろそろ「引退したい」という趣旨のことをつぶやかれてきたのだろうと察します。日本の皇室典範には「引退」である生前退位の規定がありませんのでできるともできないとも言えない状態であります。これを法制化するには時間がかかるというのが報道の趣旨であります。

しかし、82歳の陛下にあと数年というのも無理を押し付けている気がいたします。そのためには個人的には皇太子さまにまずは摂政になっていただき、そのうえで皇室典範を改正されたら良いかと思います。

そういえば、かつて男子のみの継承について議論がありましたがあれも秋篠宮様に愁仁様がお生まれになったことで忽然と消えてしまいました。本来であれば私は男子継承が物理的に継続できる環境にあったとしてもそれこそ女性の地位の話ではありませんが、議論を継続すべきだったと感じております。

摂政については大正天皇の際に後の昭和天皇がおつきになっております。大正天皇は非常に重い病気にかかられていたため公務ができず、摂政を必要としました。長い皇室の歴史を見るとそれこそ、天皇が即位するのが極端に幼少のときになるケースがしばしば生じています。平安時代の六条天皇は生後7か月11日で即位されています。日本の歴史上、他にも幼少で即位された天皇は多く、明治天皇も14歳で即位されています。

話は脱線しますが、天皇の執務が滞る際に置かれるのが摂政、関白。その多くは身内や外戚から選びますが、唯一の例外が豊臣秀吉と甥の豊臣秀次だけだったと記憶しています。秀吉は近衛家の猶子という一種の養子縁組を通じて無理やり関白になったわけでありますがこれは異例中の異例であります。世を驚かせたという意味で豊臣秀吉らしい一幕でありました。一方、天皇家は血が濃すぎるという弱点を抱えていたのも事実のようですが、同じようなことは海外の王室にも言えたことで日本だけの問題ではありません。

「人間天皇」である以上、天皇陛下も人間としてのゆったりした余生をお過ごしになる権利はあるのではないでしょうか?ましてやご本人がそろそろ、と口にされているのであればそれを積極的に受け入れるのが世の在り方だろうと思います。日本の場合、いったん敷かれたレールを変えることがなかなかできません。良い部分もありますが、個人的にはもう少しフレキシビリティを持たせてもよいのだろうと思います。

ましてや生前退位が200年前までは行われており、明治に入ってできた皇室典範でそれが謳われていないということですからある意味、皇室典範の片手落ちとも言えなくはありません。憲法改正議論が再び盛り上がる今日ですが、まずはこの改正が先にありきではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 7月14日付より