債券市場関係者が現在最も危惧しているのが債券市場の流動性の低下であろう。20年国債も一時マイナス金利となるなどしており、国債市場における国内投資家の出番はほとんどなくなっている。
現在の日本の債券市場のメインプレーヤーは海外投資家である。日本の投資家が外債を購入する際に、高いプレミアムを払って円をドルに交換し、その相手方となっている外銀など海外投資家がそのプレミアムの範囲内でマイナス金利でも円債を購入している。
そしてその外銀などの海外投資家と、日銀トレードと称される売買を行っている業者と日銀が国債の主な取引先となっている。日中の売買も主に業者と海外投資家を中心とした売買が主な物となっている。
これに対して債券先物は反対売買を前提とした取引であれば、マイナス金利などを意識せずともトレードが可能となる。しかし、その債券先物の板にやや変調の兆しも出てきた。
1985年にスタートした長期国債先物(債券先物)は日本初の金融先物取引であった。この年に銀行による国債のフルディーリングも開始されたことで、いわゆる債券ディーリングが活発化する。債券先物は海外の金融先物とやや趣が異なり、異常に中心限月に商いが集中する商品となった。その分、流動性が高くたとえばドル円や日経平均先物などと同様にほぼ取引時間中は値が付いて動いている。
このため、たとえば板が1銭以上空いた状態が1秒以上続くといった場面はあまりこれまで見たことがなかった。しかし、ここにきてそのような場面が債券先物の中心限月の板に出るようになってきたのである。
現物債は相対取引ということもあり、カレント物と呼ばれる直近に入札されたものでも常に出合いがあるわけではない。しかし、債券先物は取引時間中であれば常に価格が動いていたことで、相場の方向性などをみる羅針盤の役割ともなっていた。しかし、日銀による国債の大量買い入れとマイナス金利導入に伴う国債利回りのマイナス化は、この債券先物の流動性をも低下させつつある。
債券の流動性の低下はその参加者の厚みがなくなったためであり、このままの状態が続くと市場がいずれ凍り付いてしまう懸念がある。そんなときに債券市場に大きな売り要因が出た際に価格が予想以上に動いてしまう懸念も強まる。
このように市場の流動性は非常に重要なものである以上、それを枯渇させるような事態に追い込むべきではない。日銀はなるべく早いうちに国債の流動性を維持させるためにも、テーパリングに着手する必要があるのではなかろうか。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年7月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。