最後の爆弾破裂があるかと注目された本日発売の週刊新潮は、文春が先週号で報じた鳥越俊太郎の淫行事件について、13年前に「被害女性」に取材したときの記録。本人の希望で掲載を取りやめたが、夫が他社の取材に応じた以上は、報道するのが当然というのは筋が通っている。鳥越は本人の証言もないという主張は出来なくなりとどめの一発。
文春は鳥越事件については、疑問に答える記事だけで、自民党都連のドン内田幹事長を総力攻撃。本人のことでないので、致命的でないが、大掃除しないと自民党のダメージが大きくなる。これについては、増田寛也が、岩手県知事時代に恩人である小沢一郎の言いなりにはならなかったが、結局は権力闘争に負けて岩手を小沢直系の後任者に明け渡した経緯をどう評価するかが問題と昨日書いた(「小沢一郎に岩手を追われた増田は都連に勝てる?」)。
情勢は、マスコミ各社の評価では、小池優勢であることは共通しているものの、増田に逆転のチャンスがどのくらいあるかは意見が一致していない。
増田が組織力で盛り返すというが、私はそうは思わない。政党の地元幹部は別だが、自公の支持者にとって特段に増田のほうが小池より好ましい理由もない。むしろ保守サイドの女性スター政治家の誕生は長い目で見てプラスも大きいし、創価学会の婦人部で小池を応援している人も多い。
むしろ、増田の追い上げは知名度向上と、実務的安心感による支持拡大によるものだし、その傾向は最後までそれなりに続くだろう。
一部には保守的な小池よりは増田がリベラルだから鳥越を見放した民共票を取り込めるという人もいるが、現状でも民共支持の20%ほどが小池支持で増田支持はネグリジブルなのに。これから、増田へ行くとは思わない。増田を好むのは東京電力の影響が強い連合東京くらいで、その票はすでに増田に回っているから伸びしろではない。
そもそも、小池が保守的だというのは、中韓に甘くないとか台湾シンパということだろう。国内政策についても外交政策についても中韓以外に対しては、小池はそこそこリベラルだ。それに対して、増田は中韓にシンパシーがあるらしいが、国内政策がリベラルだとは思わない。
勝機のない候補への投票は愚劣だ
それでは、小池に死角がないかというとそうではない。それは、増田の躍進でなく、小池の票が減るおそれだ。鳥越失速を見て、鳥越阻止のために小池に傾いていた様々な層が小池から離れる可能性がある。とくに、不安があるのは、第4位以下の候補の躍進だ。
今回の知事選挙で特徴的なのは、主要候補とはいえないが、泡沫候補とも違う中間的な候補者が多いことだ。なかでも、小池にとって脅威となるのは、上杉隆と桜井誠だ。
都政を主要候補よりよほどよく知り、リベラルな雰囲気のある上杉隆は、もともと独自の人気を持つし、鳥越から離れて行き場がない人が小池に流れるの防波堤になりそうだ。
また、対外政策、かなんずくコリアン問題について超保守的な桜井(桜井パパと間違う人もありそう)は、増田や鳥越との比較で小池に流れていた人の支持が強い。前回選挙での田母神支持層には、桜井がベストで小池が次善という人がかなり多い。
政見放送を聞いてもこの二人はなかなかだ。上杉氏を第4位候補として扱うマスコミも出ているし、桜井氏も「在特会」に対する世評を知らねばかなりの説得力がある。
しかし、だからといって、彼らに安易に投票するのが正しいとは思わない。選挙は基本的には当選者を決めるためのもので人気投票ではない。実のところ、私はこれまで社民党から民主、公明、自民党までさまざまな党に投票してきた。なぜなら、最後の一議席を争うのはどことどこかを考えて、ベターな方に投票するからだ。
もちろん、小池と増田とまったく同じ程度に嫌だというなら、そのときは、他の候補に投票すればよい。しかし、有力二候補に優劣を認めるなら、まず、そのどちらかに投票すべきだ。
【追伸】週刊新潮記事への鳥越氏のトンデモ反応
「そもそも、痴漢えん罪事件が絶えないのは、被害者とされる女性の供述のみに基づいて起訴されていることにある。本件もまさに、A子氏及び、A子氏の恋人の供述のみを元にして書かれている」などと鳥越氏は抗議しているらしい。
たしかに、警察や検察が起訴したり、裁判所が女性側の言い分が吟味せずに信用して有罪にする傾向は私も問題だと思う。しかし、女性に証拠もないのに訴えるなといったら、この手の事件の告発は非常に難しいものになる。だから、対等の立場で予断なく対決するしかないわけであって、鳥越氏は事情を説明して信を問えばいいことである。
だいたい、民進党や共産党は、こういうとき、女性の言い分の方をより信用しろといってきた人が多い。慰安婦問題でもそうだ。
選挙が終わったら、福島瑞穂さんを先頭に、山尾志桜里、森裕子ら錚々たる顔ぶれの女性の権利を守る弁護士さんたちが被害女性側に立って鳥越氏と対決したら選挙より面白そうだ。あるいは、鳥越氏のH弁護士を慰安婦問題についての韓国との交渉に当たらせたい