7月28日の日本経済新聞の経済教室のコーナーで北海道大学の遠藤教授がEUの問題について論じています(グラフも同記事から)。その中で私が注目したのは、掲載されていたグラフです。
「不平等について」という本の著者であるブランコ・ミラノヴィッチ氏のデータを元に作成されたという1998年から2008年までに20年間の実質所得の変化のグラフです。それを見ると、Aにあたる新興国の労働者(グローバルに見た所得分布の中央値付近の人)と、Cにあたる先進国の上位所得者1%が上昇しているのに対し、Bにあたる先進国の労働者が下落していることがわかります。
つまり、グローバルには新興国(中でも中間層以上)が豊かになって、所得が「フラット化」しているのに対し、先進国内では貧富の差が拡大しているということです。これは、自分自身の感覚とも一致します。
タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、といったアジアの新興国にスタディツアーで出かけていつも感じることは、新興国の中心地で生活している人たちの豊かさです。一人当りのGDPでは、日本の数分の1であるこれらの国々にも、例えば東京と同じようにスターバックスがあって、価格はほとんど変わりません。そこに現地の人たちが、当たり前のように通っているのです。レストランに入っても、かつて感じたような激安感は無くなりました。
今や日本の地方都市よりも、新興国の中心部に住んでいる人の方が、経済的には豊かに暮らしているようにさえ、見えます。もちろん、少し郊外に行くと、新興国にはまだまだ貧富の差があることを実感します。しかし、中間層以上の人たちは、確実に急スピードで豊かになっているのです。
一方で、日本国内では経済格差が広がっていることを、実感することが良くあります。
例えば、マンションの販売状況を見ると、5000万円程度までの物件が価格上昇で売れなくなってきているのと対照的に、都心部には最低価格が数億円という高級マンションが次々と建設されていて、こちらは販売好調だと聞きます。あるいはファストフードのレストランチェーンが価格を引き上げられない中、ミシュランで星を取っているような高級レストランは数か月先まで予約が取れなかったりします。日本国内でも、他の先進国と共通の「経済格差の拡大」が起こっているのです。
新興国が成長すればするほど、先進国内の経済格差が広がり、不安定化する。この傾向はこれからもさらに強まっていくとすれば、仕事のやり方も、お金の増やし方も、目先のことだけではなく、このようなグローバルに進む大きな変化を捉えながら考えていく必要があると思います。
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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年7月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。