宇都宮氏の応援拒絶真相と女性議員の不甲斐なさ

八幡 和郎

鳥越俊太郎氏の応援を宇都宮健児氏がしなかった経緯が明らかになった。選挙前には、「応援するための条件を提示したが意見が一致しなかった。その申し入れの内容は選挙が終わってから発表する」ということだった。

そして、選挙が終わって、同氏と「希望のまち東京をつくる会」が文書を発表した。それによると、7月28日に鳥越氏宛てに文書を送り、女性問題に関し次のように書いたという。

・具体的な報道内容を見る限り、これを『事実無根』として退けられる案件とは考えられません。また、『事実無根』だとする説得力ある反証も挙げられていません。

・被害を受けたという女性がおられる以上、都知事候補として、どのような事実があったのかを自ら公開の場で説明し、被害女性および都民の納得を得る責任があると考えます。 

・私はこれまで多くの人権問題に携わってきました。その原則をここで曲げることはできません。鳥越候補がこれまでの対応を撤回せずに説明責任を果たされないとすれば、きわめて遺憾ではありますが、都民に対してあなたを都知事にふさわしい方として推挙することができず、応援に立つことはできません。 

まことに法律家として筋の通った論旨である。私も10年余りあとに同じ大学の同じ学部で学んだ者として、我々が学んだ法の精神はこういうものだったと気分が良かった。法学を学ぶと言うことは、法務知識を駆使し正義を無視して自己の利益を図る技術を獲得することではないと教えられたものだ。 

これを見て、この宇都宮氏にこそ知事になって欲しかったという声も高まっているくらいだが、いくら立派な人でもめざす政策が正しいか、経済的な裏付けがあるかなど別の問題だから飛躍は困るが、宇都宮氏のこの意見表明が、こんどの都知事選挙を締めくくる一服の清涼剤となったことは間違いない。 

しかし、これを見て、鳥越氏を最後まで応援した女性議員たちは、どう感じるだろうか。いつものフェミニストぶりはどこに行ったのだろうか。

蓮舫や山尾志桜里さんたちの姿は最後の方では余り見なかったような気もするが、29日には、福島瑞穂、辻元清美、吉良よし子、阿部知子、澤地久枝、岡野八代、雨宮処凛各氏ら政治家や文化人ら女性31人が、新宿駅東口や渋谷駅ハチ公口などで“鳥越知事″実現を熱く訴えたし、最終日には、山内れい子(生活者ネットワーク都会議員)、田村智子(共産党参議院議員)、佐藤あずさ(社民党八王子市会議員)らが最後の訴えに花を添えた。

選挙が終わったいま、彼女たちは、見解を発表すべきだと思う。

一方、先頃の参議院選挙で落選した林久美子・前参議院議員(民進党)がFacebookへの投稿の中で、「私は小池さんを応援していたわけではないが、選挙前に、ある自民党議員のコメントとして、次のような話をしていた。

『言うことを聞かない小池』との字幕を見た時に、正直、心が揺れた。

なぜなら、私自身、議員生活の中で『言うことを聞け』と仲間であるはずの議員から何度も言われたから。 

男性には向けない『言うことを聞け』という言葉は、いつも女性に向けられる。自立した個人ではなく、支配の対象として、女性を見る空気。それを当然とする後進的意識。

だから「精神的ジャンヌダルク」である女性は決して少なくないと思う。

一方でジャンヌダルクであることを演出し、国民に見せるのは、勇気のいる行為でもある。自らがジャンヌダルクであることをより強く演出し、堂々と見せた小池さんの勇気と決意、信念の勝利かもしれない。

このように、ごもっともな感情を吐露している。

どうも、野党連合がかつぐ変な候補にまで無理な応援をしているのであって、そういう立場を離れると普通の良識を持つ女性議員が民進党でも社民党でも普通だと思う。 

私が小池氏の出馬声明のときに提案したように、超党派の「女性党」といった気持ちで戦ったら日本の政治が変わるという提案は悪くなかったと思う。

もちろん、小池氏が崖から飛び降りたのを横目に、与党で黙々と増田候補を支援した与党の女性議員も問題。たとえ、正面から応援できなくとも、強力なエールを送るくらいはできたはずだと残念なきがする。