講演中の船見。
厚労省によれば、うつ病を含むメンタルヘルス疾患の患者は、平成20年には104万1,000人に達し、平成24年に精神障害で労災認定された人は、3年連続で過去最多を更新している。この状況を鑑みればメンタルヘルス対策は時代のニーズであり喫緊の課題だと判断することができる。
課題を認識するために何からはじめるべきなのだろうか。企業向けのメンタルヘルス対策に取り組んでいる、船見敏子氏(以下、船見)に話を聞いた。
●部下の叱り方を知らない上司
――「今の若い人は、ちょっと叱るとすぐに折れてしまうから、怖くて叱れません」。こんな悩みをよく耳にする。しかし本質は叱り方では無いようである。
「人を成長させるためには、長所を伸ばすことがそもそもは大事なのですが、そうはいっても何度も同じ失敗を繰り返す部下や、やる気がなさそうな部下を目の前にすると、イライラした感情が沸き上がり、長所を見つけるのは難しいかもしれません。」(船見)
――それに加えて、ガツンと叱ると折れてしまう。さてどうしたものかと悩む管理職は多いようだ。まずはその構造について知るべきなのだろう。
「部下を成長させるには、適切に叱るスキルを身につけましょう。『叱る』とは、その人が成長できるよう適切に教え導くこと。怒りの感情にまかせて上からものをいう『怒る』とは違います。上手に感情をコントロールして、怒らないように叱ってください。」(船見)
――さて、では上手に叱るにはどうしたらいいのだろうか。船見は「褒める」の間に「叱り」をはさむ「サンドイッチ方法」が効果的であると述べている。
「まず初めに、仕事ぶりや人柄など、本人のいいところを伝えて、相手の心をほぐします。そうして、感情的にならずに『私』を主語にして叱ります。最後にもう一度ほめて締めくくるのです。たとえば、話をちゃんと聴かない部下を叱るとします。」(船見)
「『キミは作業がスピーディだからいつも助かっているよ。だからこそ、もっとチーム内で力を発揮してほしいと思っている。でも残念だよ、また先方の話を聴き逃してミスしたわけだよね。今後は話をしっかり聴いて、ちゃんと報告してほしい』。このように話せば、部下は『叱り』をちゃんと受け止め、行動改善しようという気持ちになるはずです。」(同)
●上手に叱るために褒めよ
叱られるのは誰でもあまり嬉しくないもの。だからこそ、叱るときには、それを受け入れる土壌を相手の中に作ることが大切だ。叱られるときはたいてい本人にも自覚があるはず。頭ごなしに叱られ続けたら、卑屈な気持ちになって、素直に相手の言葉を受け入れられなくなってしまうだろう。
同じ失敗を繰り返すのも、やる気がないのも「褒める」が足りないからかも知れない。上手に叱るために褒める。このちょっとしたテクニックが、部下を伸ばし、自分をも成長させる契機になるかも知れない。
船見の参考著書
『職場がイキイキと動き出す 課長の「ほめ方」の教科書』
尾藤克之
コラムニスト
PS
7月26日開催の「第2回著者発掘セミナー」は好評のうちに終了しました。多数のご参加有難うございました。なお、次回以降の関連セミナーは8月末頃に公開する予定です。