9月末の産油国協議は成功する!?

8月11日(木)、原油市場は大幅上昇で終えた。WTIが+1.78ドルの43.49ドル、ブレントが+1.99ドルの46.04ドルである。

朝方は「IEA8月月報」が、2016年の需要は140万BD増で前月と同じだが、2017年の見通しを130万BD増から120万BD増に下方修正したことから下落していたのだが、9月末の産油国協議に関するサウジ・ファーリハ・エネルギー相の発言が伝えられたことから大幅上昇に転じたようだ。

FTの ”Saudi minister says Kingdom could help rebalance oil market” というタイトルの記事がまとまっているので紹介しておこう

・Saudi Press Agencyへのメールが間違ってジャーナリストに送られたもの。本来はインタビュー記事の原稿の一部。
・ファーリハ・エネルギー相は「もし市場がバランスするために行動する必要があるなら、サウジはOPECおよび非OPEC主要産油国と協力して対応する」と発言。
・予想外の熱波により暑い夏を迎えたが、効率化策が功を奏しサウジの国内需要増は昨年より少なかった。
・7月の記録的な増産は、旺盛な夏季の国内需要のみならず世界中にサウジ原油への需要があるから、と指摘。主要市場であるアジア向けの価格を大幅に引き下げ、イラン、イラク、ロシア等との市場シェアー競争には対抗する意思を示している。
・6月に、市場に原油を溢れさせる意図はないと発言しているファーリハは、リバランスは順調に進行しているが、大量の在庫があるので「時間がかかるだろう」としている。
・アナリストたちは、4月に失敗していることもあり、9月の協議でいかなる生産量に関する合意も難しいだろう、と見ている。
・また「現状の低価格は持続しえない」、最近の下落はヘッジファンドの動きが主因、「投資と生産の減少傾向を逆転するためには価格が上昇しなければならない」としている。

ううむ。
一読して筆者は「今回は成功するのでは」との感を持った。なぜなら、サウジ以外の産油国は、現状ほぼ生産能力に近い生産をしているからだ。

各国の最近の生産実態を、8月10日(水)に発表された「OPEC月報8月号」から見てみよう。
イランは、次のように昨年実績から80万BDほど増産し、経済制裁以前の水準に戻っている(参考までにサウジの生産量も併記しておく)。(単位:百万BD)

2015  1Q16  2Q16  5月   6月   7月
イラン 2.840   3.096 3.595  3.560 3.617 3.629
サウジ 10.123 10.147 10.294 10.242 10.407 10.477

ロシアについては次のように、現状がほぼピークとしている。すなわち2016年1~6月平均は1,104万BDだが、7~12月は13万BD減の1,091万BDとなり、2016年通年が1,098万BD、2017年平均は4万BD減の1,094万BDと予測している。

このように各国とも9月末の協議で、最近の生産水準で「Freeze=据置」することに合意しても、失うものはほぼ無いが、市場が好感して価格が上昇すれば収入増というメリットがある、と筆者は判断するが如何なものであろうか。

そう言えば、最近動向が報道されていないが、サウジの副皇太子はこの「協議」にも反対するのだろうか?


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年8月12日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。