写真は丸山。現役CAであるため顔写真は非公開とした。
LCCは、効率化の向上によって低い運航費用を実現し低価格かつサービスが簡素化された航空会社のことをさす。機内のエンターテインメントシステムである、映画・音楽などは無く、座席の間隔も既存の航空会社に比べれば狭い。今回は、現役CAの丸山美子(仮名)にLCCの安さの秘密について聞いた。
■LCCは断捨理である
–-LCCの片道運賃は、国内では、3千円台から2万円台の範囲と幅があるが通常より廉価に設定されている。丸山美子氏(以下、丸山)は、LCCは「航空業界の断捨理である」と次のように述べている。
「多くの航空会社は、荷物が少ない人も食事や飲み物もいらない人も、一律の料金設定です。LCCは、荷物が少ない人は、それを含まないチケットがあり、その安さは、そもそも、飛行機に乗る為だけの、座席の権利を購入していただく料金のみです。」(丸山)
–-LCCは選択式で、航空会社が提供するサービスを受身で乗る飛行機ではなく、「必要があるか、ないか」を考えてチケットを購入する航空会社である。つまり、サービスの内容を選択する航空会社ということだ。
「国内LCCの場合、片道3~4時間の路線がほとんどです。機内には、毛布もなければ、飲み物もありません。欲しい人は、お金を出して購入していただくのです。荷物の預けが多い人は、その重量分の荷物料金を選んで頂いて座席分の料金に上乗せしていきます。」(丸山)
「LCCはサービスを簡素化する事により、飛行機の重量を軽量化し、燃料費を削減する仕組みを作りました。ギャレーを縮小化して座席の軽量化にもつとめました。また、LCCでは空港の施設の隅に飛行機が駐機されています。というのも、空港と飛行機をブリッジ(連絡橋)でつなぐのには、高コストなのです。ブリッジを使わずにバスを利用して飛行機に向かう方が空港使用料が抑えられるわけです。」(同)
–-なお、丸山は、海外の航空会社を経てLCCに転職している。そして、転職後に驚いたことがいくつかあるそうだ。
「私はLCCに転職して驚いたことが3つあります。1つ目は機内清掃をCAがすることです。便と便の間に機内を清掃するのですが、全て客室乗務員がおこないます。2つ目はクルーミールがないことです。お客様への無料の食事のサービスがなくなり、全てが有料化であるのがLCCの基本です。それでは、客室乗務員及びパイロットの食事はというと、それもありません。3つ目は送迎がないことでした。」(丸山)
「レガシーキャリアと呼ばれる航空会社のパイロットや客室乗務員には、乗務したフライトに必ず食事が搭載されます。12時間のフライトであれば、2~3回分のミールが1人に割り当てられます。LCCでは、コストの徹底を図るため搭載はされず、自分で買ってきたり、お弁当を持ってきたり健康ドリンクを持ってきたりと様々です。3~4時間程度のフライトですから食べない人も多いです。」(同)
「前職の航空会社では、フライト前には自宅から会社までの送迎がありました。ですが、LCCでは、一切送迎がなく、自分の車や、タクシーを使って、自力で会社に行くのです。最初は驚きましたが、最近では、レガシーキャリアもコストを節約のために送迎を廃止する会社も増えています。」(同)
–顧客ニーズにこたえるために、不要な物を減らし、全体の調和をもたらそうとするスタイルは断捨離といえるのかも知れない。
■本日のまとめ
また、業界特有の慣習を見直し修正する発想がLCCにはあると、丸山は述べている。
「クルーになると、全てが与えたられた環境になります。なかばそれを当然と思っていた時期がありました。ちょっとした勘違いの感覚が自分を見えなくしてしまいます。今では、レガシーで与えられてた事が、必要だったのかな?と思っています。そして仕事の本質を学べるのがLCCだと思っています。」(丸山)
設備が整っていたり、福利厚生が手厚かったり、与えられるものが多いと、いつの間にか、自分が得られる当然の権利と思ってしまうものだ。皆さまの働く環境は如何だろうか。
なお、新刊『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』は、「007ジェームズ・ボンド」が社内の理不尽に立ち向かう想定で書き起こしたマネジメント本になる。社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対応するのか、映画シーンなどを引用しながら解説している。
尾藤克之
コラムニスト
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