ブルの鼻息が止まりません。
ダウをはじめS&P500、ナスダックは15日、先週11日に続き過去最高値を同時に更新してきました。これだけ著名投資家が高値警戒を表明しつつも、どこ吹く風。唸りを上げて高値を目指しています。
米株高の一因として、未だ低い利上げ観測が挙げられます。米7月雇用統計で9月の追加利上げ観測が以前より強まったものの、米4~6月期GDP速報値や米7月小売売上高をなど他経済指標が芳しくなく、FF先物市場での9月利上げ織り込み度は12%に過ぎません。ジャクソン・ホールでのイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演も、タカ派へ振り切るかは不透明。バーナンキ前FRB議長が8日付けのブログで指摘したように1)潜在成長率、2)自然失業率、3)中立的金利水準――などの低水準に言及する見通しとされ、仮にタカ派の羽根を広げても9月利上げの自由度を保ちつつヘッジを掛ける見通しです。
2つ目に、企業業績が挙げられます。メイシーズをはじめコールズなど百貨店関連の決算が堅調で成長鈍化懸念が払しょくされました。グーグルやフェイスブックなど、テクノロジー関連も好調。ゼネラル・エレクトリック(GE)は力不足だったとはいえ、資本財関連ではキャタピラーが慎重な見通しを示しつつ予想以上の業績を叩き出すなどまずまずとなっています。何より上半期末で業績リセッションに幕を下りる公算とあって、今のうちにロングを仕込んでおくのも戦略でしょう。
3つ目に、イングランド銀行が追加緩和に踏み切るなど世界的な過剰流動性相場が再燃したことも留意しておきたい。S&P500の株式益回りが6%とされ米10年債利回りの1.5%を超える事情も取沙汰されていました。
もうひとつ、巷の話題は米大統領選の行方です。足元、相次ぐ失言を受けて共和党のトランプ候補の支持率が低下するなかでクリントン候補が再びリードを拡大してきました。米大統領が民主党出身ならS&P500のリターンが大きいという実績から、クリントン候補の勝利を念頭にマーケットが薄い8月に上昇を先取りしたという仮説を立てたくなるものです。
トランプ候補側からは、悪材料が尽きません。選対責任者のポール・マナフォート氏に、ウクライナの元親ロシア与党から不正な資金供与を受けていたとのニュースで飛び出す始末。共和党全国大会で高評価だった長女のイヴァンカ・トランプ氏にも、火の粉が舞い降りています。クロアチア旅行に出掛けた相手がプーチン露大統領の愛人と噂されるウェンディ・デン・マードック氏だったから、さあ大変。その名でピンと来られた通り、ニュース王ルパート・マードック氏の3番目の妻で2013年に離婚した方ですね。
トランプ陣営のロシア・コネクションが問題視されるなか、どんな秘策を打ってでるのでしょうか。クリントン財団を通じた海外への利益供与なのか、FBIが米議会に手渡すメール問題捜査資料が波乱を招くのか、トランプ候補並びに共和党のお手並み拝見といったところです。
(カバー写真:Veni/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年8月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。