外貨を稼げぬ地域に、繁栄と賑わいはない! --- 長井 利尚

高崎まつり

私が生まれ育った高崎市では、毎年8月最初の土日に、”高崎まつり”というイベントが行われます。山車が出たり、花火大会があったりして、雰囲気の良いイベントだと思います。

しかし、非常に残念な部分があります。それは、“外貨を稼ぐ”という発想が全く感じられないことです。英語による広報は極めて不十分(Webコンテンツは充実しつつありますが、PVが伸びないので、宝の持ち腐れ)ですし、外国人観光客に英語で”高崎まつり”を説明する地元ガイドを見たことがありません。

このイベントに参加するのは、高崎市民をはじめとした地元民および、就職等で県外に流出した高崎市出身者がほとんどです。単なる内輪受けのイベントに留まっていることが残念でなりません。東京生まれ、東京育ちの方は、このイベントの存在すら知らない人がほとんどです。外国人なら、尚更です。

“高崎まつり”の存在を知っている人なら、いくらでもインターネット等で調べると思いますが、そもそも、その存在自体を知らない人は、内容を調べたりしませんよね。

“高崎まつり”に参加している人の顔ぶれを見ると、子供達は、近い将来、進学校に進学すれば、8割は高崎を捨てて東京などに流出するだろうし、高齢者は、20年後には死んでいるか、寝たきりになっている人がほとんどです。このままでは、高崎市の衰退は目に見えています。”高崎まつり”の存続すら危うくなるのではないでしょうか?

富岡製糸場が世界遺産に指定され、富裕な外国人観光客が高崎駅まで新幹線で来ているのに、彼らは上信電鉄に乗り換えて上州富岡駅に行くだけです。高崎駅の外には出ません。高崎は、群馬県の中では街ですが、東京から見れば田舎です。ほとんどの都民には、「高崎はイケてない」という認識すらなく、無視されています。

そんな田舎に、「高崎文化芸術センター(高崎市が建設を強行する『都市集客施設』のひとつ。東京・赤坂の『サントリーホール』よりも規模が大きいという、高崎には分不相応な建物)」や「コンベンション施設(高崎駅東口から約1kmも離れた高崎競馬場跡地に、群馬県が建設を強行する巨大ハコモノ)」を建てるの は、ピントがずれているとしか言いようがないのです。

「ミニ東京」は、本物の東京に必ず負けます。そんなものを建てるなら、倉敷の「美観地区」や、「小江戸」川越のように、昔の街並みを再現して保存する方が、余程集客力は高くなると思います。「昔の高崎」を再現したエリアを作れば、建設業者様にお金を流すことができ、建設業者様はその高度な技術力を十二分に発揮できるでしょう。

高崎市民に喜ばれることはもちろん、東京や京都など、有名な都市に飽きた、富裕な外国人観光客を引き寄せることも、広報戦略次第では可能と思います。高崎市内で1泊10万円の宿に泊まりたいという層が増えれば、良質な雇用が生まれ、高崎市内の進学校卒業生が働きたいと思うでしょう。

京都には、外国人観光客が毎日多数押し寄せ、お金を落としてくれます。京都という街からは「観光で食っていく」という強い意志が感じられます。一朝一夕にキャッチアップすることはできませんが、参考にすべきことは多々あります。何事も、本物を見ることが大事です。

昨日の拙稿「高崎市は、なぜダメなのか?そしてその改善策」では、外国人観光客がよく読むガイドブック「Lonely Planet」を紹介しました。高崎市で観光や”高崎まつり”に関わる人は、全員このような本を熟読して、戦略を練り直すのが良いと思います。外国人富裕層から見て、魅力的な存在に自らを変えることができれば、国家財政破綻後も、高崎市は繁栄し続けるでしょう。

もうすぐ、補助金や地方交付税は当てにできなくなるのですから、自力で外貨を稼ぐ知略 が必要です。「1ドル=300円」になると、外貨を稼げない人は生存できないと思います。

“高崎まつり”だけでなく、”キングオブパスタ”や”薪能”、”だるま市”など、高崎市には、広報戦略次第で外国人富裕層を引き付けるイベントが既に幾つもあります。柳井正さんほどの事業家でも「一勝九敗」なのですから、失敗を恐れず、前を向いて、PDCAサイクルを回していきましょう!

「空気」を読まずにそれを完遂できれば、昔、「お江戸見たけりゃ高崎田町」と言われた高崎市中心部に繁栄と賑わいが戻ってくるはずです。「空気」を読まないことがマストです。

会社経営・鉄道写真家 長井利尚