フジテレビのネット専門放送「ホウドウキョク」内の明日のコンパスという番組に呼ばれて、さっき電話インタビューで15分出演しました。テーマは、SEALDs(自由な民主主義のための学生による緊急アクション)の解散について。
って生放送終わってから知らされても!って感じですけど、昨日の夜メールが来て打ち合わせして今日さっき出演して・・・という急なスケジュールだったので、ネットでアーカイヴが全部見れるタイプらしいし終わってから告知しようと思いまして。
こちらのページ↓で
全部見れます。僕の出演(声と写真だけですけど)はこの分割動画の24分30秒から15分程度です。
以下、打ち合わせ段階で、「4つの論点」について聞かれて送った文章があるので、多少読みやすくしてブログにします。特に最後のリオ五輪柔道の話とかは大事なんだけど時間的に触れられずに終わったので、こちらはこちらとしてお読みいただければと思います。
なんか妙に緊張したけど楽しかったです。お呼びいただいた速水健朗さん、スタッフのみなさん、ありがとうございました!!
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質問1 SEALDsに対する評価は?
メンバーの伝え聞く人柄は人間として嫌いなタイプではない(むしろ好感)が、あの運動が何か全く新しい解決の軸になり得るとは最初から思わなかった。
質問2 SEALDs誕生の背景は?
20世紀型の左翼性(=完全無欠の善人なる俺たちが、社会のあらゆる問題の元凶のアベとかいう極悪人どもを倒せば全てが良くなる的な発想から入る思想性)というのに限界が来ていて、それを生まれ変わらせなくてはいけない時期だと個人的に考えているが、その為には古いタイプの左翼性の限界が白日の下に晒される歴史的必要があった。その中で、手法やテイストは凄く斬新だが路線や思想自体は古いままなシールズという存在に、20世紀型左翼が一度賭けてみて、そして挫折することでその先が見えてくるという時期だったと思います。僕自身も含めてああいうのでいけるんじゃないか、と思ったけどやっぱりダメだったぁー、と確認することで社会が進歩することもある。
質問3 なぜSEALDsは解散に至ったのか?
手法やテイストは斬新だが中身は20世紀型の左翼性そのものだったからくるべき限界が来たんじゃないか。
質問4 SEALDsの活動が社会にもたらした影響は?
この20世紀型のスタイルじゃダメなんだと総括して、根本的に新しい思想性を打ち立てる機会にするべき、と希望を込めて総括したい。まあそうならず単なる内ゲバが今後も続くかもしれないが。自分も微力ながら当事者意識を持ってチャレンジしていきたいと思うし速水さんはじめ多くの穏健派知識人もそう思っているはず。
具体的に、シールズシンパでアンチ安倍な人に経営コンサルタント的にアドバイスができるんじゃないかと思うことを2ついうと、
A 戦略的には「実務家イメージの中道左派政党」を受け皿とすること、
B 本質的にはリオ五輪柔道代表のような「伝統と改革が両立した成功例」を、それぞれ自分が生きている持ち場で実現しようとすること
が大事と思われる。
Aについて。
他人を動かすには「自分が言いたいことでなく他人が聞きたいことについて考えて伝える時間がもう少し必要」。
例えば、買い手の判断基準の中には大して値段は入ってなくて、それを買ったら凄いハッピーになれるんなら10%20%なら追加で払ってもいいと思ってるタイプの商品なのに、その売り手の会社の社員は営業トークで値段のことしか言ってない・・・というようなことは良くある。
これを今の日本の政治状況の話でいうと、安倍政権は選挙があるたびに勝つけれども、それは日本人が凄い「右傾化」してるからか・・・というとそうでもない。端的にいうとこの前の民主党政権がダメすぎる印象を残したから、まあ自民にしとくかってことになってるだけ。
つまり、日本国民のニーズは、まず第一に「過剰に理想主義的でなくていいから現実的な舵取りを任せられそうな相手」という部分にある。そこがまず相手のニーズだから、それを満たして初めて、こちらの言いたいことも聞いてもらえる状態になる。
今は「この車本当にちゃんと走るのかな?」と思われてる顧客に「このボディの塗装は新技術なんです」とか必死に売り込んでいるような感じになっている。「ちゃんと走るという安心」を与えたら「聞いて欲しい新技術についてのセールストーク」も聞いてもらえるようになる。
だから、共産党みたいに「反対のための反対をする野党」もチェック機能として必要だけど、それとは別に「代替案としての野党」を真剣に立ち上げられるようになるかどうかが、「本当に安倍を止める」ためのマクロな戦略となる。
共産党みたいに市場経済に対して懲罰的な態度を取ることなく、基本的にビジネスがしやすい環境整備に前向きで、でも自民党よりも格差是正の再分配や貧困対策にはかなり前向きで、国際協調のハト派だけど、中国とかに対してちゃんと毅然とするべき時にグダグダになったりしない・・・・・・というあたりの「中道左派」政党で、「理想より実務力」っていう印象のまとまりが出てきたら、はじめてこちらの言いたいことがストレートに聞いてもらえるようになる。時代の流れの変化に乗れば政権交代も可能になるだろう。
こういう方向性が、シールズシンパで安倍嫌いの人への経営コンサルタント的にアドバイスしたい「戦略」です。
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で、それとは別に「本質的に大事な戦場」は別にあって。それがBのリオ五輪の柔道チームのような・・・という話なんですが。
「一本取る柔道」を否定せず大事にしつつ、他の格闘技や科学的トレーニングも取り入れて圧倒的に勝つというような。
あれって簡単なことではなくて、外部の専門家呼べばいいとか言う話じゃない。「伝統」の方を深くわかってる監督が、その大事な部分を壊さない形で、外部の専門家をうまく活用する「両立する文化」が現地現物にできていたからできること。
普通だと、伝統にこだわって改革を全拒否にしたり、逆になんでもかんでも無理に取り入れて自分たちの強みを見失って崩壊する。
日々日本人が生きている経営の現場・家族とのコミュニケーションの現場・教育の現場・メディア活動の現場・・・・あらゆるところで、できるだけこういう「両立する成功例」を増やせる社会的スキルを身につけようとすることが大事。
それが社会のあちこちで滞りなく起きていれば、「伝統」を代表する右翼さんたちや「改革」を代表する左翼さんたちが、「相互理解不能なぐらい過激化する必然性がそもそもなくなる」。
そういう毎日の相互理解のチャレンジこそが大事で、デモ参加して相手を罵らないと民主主義じゃないとか言うのはやっぱり違う。シールズの元メンバーには就職する人も多いだろうし、今度はそういう「社会のあちこちの持ち場でのチャレンジ」を頑張って欲しいです。
放送でも最後に述べましたけど、シールズのメンバーさんたちも、本当は「もっと先があるはずなのになんでこうなってしまったんだろう」と思ったところはあったはずなんですよね。そういう印象は色んなところから伝わってきますし。
だから、シールズメンバーも、シールズシンパも、シールズを苦々しく見ていた人も、協力して「その先の形」を見出していかなくちゃいけない時代だってことが、共有できたら、シールズの存在意義も物凄くあったと言っていいと思います。
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最後に。
電話インタビューでもありましたけど、A策にしろB策にしろやりはじめると短期的な人気取りはちょっと難しくなるんじゃないか?という話はあるんですよね。
でも、そこを疎かにして今のままで突っ走ると、短期的に注目を浴びるかもしれないが、都知事選の時みたいに、いわゆる「左翼的良心」そのもの全体に対しての信頼が落ち込んじゃうような結果になりそうで。
ちょっと難しいかもしれないが、こういうルートを通って地道にやっていくことで、「安倍じゃない選択肢をまず準備する」ところまで行けば、あとは風向きがちょっと変わるだけで政権交代も可能になるだろうと思います。
逆にいうと、多少難しくても「本当に大事なこと」を諦めずにいれば、「そこに中心軸があったらいいなあ」という感覚は、「目立つ動きが失望される」流れが起きれば起きるほどに募っていくので。
ワタアメの機械に割り箸突っ込むみたいに、今までフワフワしてとらえどころがなかったけど「確かにそこにあるもの」みたいな状況になっていけば、どこかのタイミングで「新しい中道左派的中心」も作れるし、それができてはじめて「アベ的なるもの」は克服可能になるだろうと私は思っています。
形になるのが遅くてもとりあえずワタアメを作っていきましょう!みんなで一緒に「割り箸」を突っ込む日を夢見て・・・・
そういう「20世紀的左翼を超える新しい方向性」については、例えば私のこの本や、このワタアメの絵が載ってるこの本なんかをお読みいただければと思います。
それではまた、次の記事でお会いしましょう。ブログ更新は不定期なのでツイッターをフォローいただくか、ブログのトップページを時々チェックしていただければと思います。
倉本圭造
経済思想家・経営コンサルタント
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