現役CAに聞いた!LCCとレガシーの違いはなにか

尾藤 克之

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写真は丸山。現役CAであるため顔写真は非公開とした。

LCC(Low-Cost Carrier)とは、効率化を極限まで向上させることで低価格なサービスを提供する航空会社のことである。一般的に考えられるレベルを超越した徹底的なコスト削減が実施されている。一方、レガシーは既存の航空会社に分類される。

LCCと、レガシーは何が違うのか。一般的に、LCCは「コスト削減によりレガシーより価格が安い運賃を提供している航空会社」になる。しかしそこに明確な線引きは無い。

例えば、飛行機のフライド状況などの調査をしているFlightStatsは、「AIR DO」をLCCに分類しているが、日本での区分けは地域航空会社の「FDA」に近い。同様に「スカイマーク」もLCCに分類されることがあるが、自社がLCCでないと主張している時点でLCCではない。つまり、人によって判断がわかれているということである。

今回は、現役CAの丸山美子(仮名)にLCCとレガシーの違いについて聞いた。

■LCCとレガシーの比較をする

基本的に、LCCとレガシーは異なるものと考えなくてはいけない。レガシーで普通に受けていたサービスが、LCCでは有料になる。飲料、食事、ブランケット、クッション、無料で預けられる重量制限枠が設定されている(もしくは無い)ので追加料金が発生する。

「LCCはシートピッチが狭いためレガシーより座り心地が窮屈になります。座席モニターが用意されていないLCCも少なくありません。レガシーで無料のものが有料の扱いになるものがあります。ですが、レガシーの半分以下の運賃は大変魅力的だと思います。」(丸山)

LCCの「激安」ともいえる料金設定を見ると、安全面での手抜きはないのだろうか、と不安に思う人がいるかも知れない。

「LCCは、古い機種を使用しているという意見があります。この表現は適切ではありません。新造機を同一機種にすることで、整備を統一化させてコスト削減を実現しているのです。同一機種なので整備士の習熟度も早いため効率的といえます。」(丸山)

調査会社などのさまざまな機関がエアライン別の事故率を発表しているが、実はLCCとレガシーの事故率に、大きな差が見られるわけではない。優良企業としても名高い、「サウスウエスト航空(米国)」、世界最大LCCの「ライアンエアー(アイルランド)」は、会社の創立以降、乗客・乗員の死亡事故を起こしていない。

2003年、「シンガポール航空」が、「タイガーエアウェイズ・ホールディングス」に出資して設立した、「Tiger Airways(シンガポール)」は、親会社である「シンガポール航空」と同様に、A320型を中心に展開することで同じ整備システムを利用している。

また、欧米では国の厳しい安全基準が設けられており、LCCとレガシーとの間に、安全面における差はほとんど無いともいわれている。

しかし、LCCは一度事故を起こすと経営危機に直面する。1996年に「バリュージェット航空(米国)」が墜落事故を起こし乗客・乗員合わせて110名が亡くなる事故が発生した。その後、「バリュージェット航空」は航空業界からの撤退を余儀なくされた(実際には、エアトラン航空-サウスウエスト航空が事実上の吸収)。

LCCの同一機種による取扱い簡便化による安全効率の向上、整備基準等は遵守すべき最低基準ではあるともいえる。しかし、その内容は会社毎に分類や区分けが異なるため比較が容易ではない。今後は、利用者にとって分かりやすい情報公開が求められるだろう。

■目的や好みに合わせた選択が必要

FlightStatsによると、2015年の定時到着率で「日本航空」は89.44%で世界No.1である。「全日空」は88.88%で世界3位となっている。LCCでは「AIR DO」が86.37でトップだが、ほかのLCC各社は及ばない。

定時を実現するためには、空港地上支援業務などのグランドハンドリング、整備、クルーの役割など全てが機能する必要性がある。そして、社員を巻き込むための強い理念やビジョンが必要になることは火を見るよりも明らかである。

「理念やビジョンが組織全体に浸透し行き渡ることで、各々が役割を果たすことができます。LCCは究極の企業努力の姿であるともいえるでしょう。」(丸山)

LCCは既存のレガシーとは異なるものと考えなくてはいけない。また、LCCとレガシーを比較してどちらが良いかを議論している人が多いが、意味があるとはいえない。常に選択肢は乗客側にあり、目的や好みに合わせてチョイスすることが必要である。

今回は現役CAの丸山美子(仮名)氏からいくつかの情報提供をいただいた。この場を借りて深謝したい。

なお、新刊『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』は、「007ジェームズ・ボンド」が社内の理不尽に立ち向かう想定で書き起こしたマネジメント本になる。社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対応するのか、映画シーンなどを引用しながら解説している。

尾藤克之
コラムニスト