8月22日に日本証券業協会は7月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。
7月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別
都市銀行 -975(-865、748、-482)
地方銀行 -5351(-2377、-2446、161)
信託銀行 1237(-559、2950、464)
農林系金融機関 -2048(-1598、76、155)
第二地銀協加盟行 -1678(-800、-520、-20)
信用金庫 -3089(-2382、381、520)
その他金融機関 1842(-388、984、1335)
生保・損保 -3402(-2875、439、382)
投資信託 682(541、218、510)
官公庁共済組合 -175(-47、-3、3)
事業法人 -264(12、-22、2)
その他法人 -73(-37、289、130)
外国人 -16693(1860、-4453、-13200)
個人 432(2、33、6)
その他 11357(10690、3833、731)
債券ディーラー -304(53、487、-763)
都銀はそれほど金額は大きくはないが買い越しに転じた。6月に大きく売り越していた地銀は買い越しとなっていた。長期ゾーンを買い戻した格好に。海外投資家は中期ゾーンを主体に引き続き大幅買い越しとなった。買い越しは25か月連続となっている。
国債の投資家別売買高(一覧)での合計の国債売買高でみてみると2016年5月分の国債売買高は162兆1940億円となり、統計のある2004年4月以降最低となっていた。しかし、6月は201兆7760億円とかなり回復していた。6月は英国のEU離脱によりリスク回避の動きを強め、日本国債も買い進まれていたことで売買高が膨れた面もあった可能性もある。そして7月の数字をみると183兆9885億円と6月から減少していた。
7月に入り米10年債利回りは一時1.3%台をつけ過去最低を更新し、30年国債の利回りも過去最低を更新した。ドイツの10年債利回りもマイナス0.2%台をつけ、スイスの50年債利回りが初のマイナスとなった。この世界的な金利低下の動きもあり、日本の債券市場も連日のように国債は過去最低利回りを更新した。バーナンキ前FRB議長が日銀総裁や安倍首相と会談したことでいわゆるヘリコプターマネー政策への期待も出ていた。日銀の追加緩和期待なども出たことで債券先物は過去最高値を更新するなど買い進まれた。
しかし、7月29日の日銀金融政策決定会合では「金融政策の強化」としてETFの買入を現行の3.3兆円から6兆円とすることなどを決定。一部期待のあったマイナス金利の深掘りや国債買入の増加などは見送られた。これをきっかけに債券相場は調整局面入りすることとなった。
7月は債券先物が高値を更新するなどしていたが、全体の現物出来高はそれほど多くはない。相場が調整局面を迎えた8月に特に海外投資家がどのような動きを示し、売買高にどのような影響があったのか。債券の流動性が低下しつつあるのかどうかは、8月の数字を確認する必要もありそうである。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。