自民党の二階俊博幹事長が「女性尊重の時代に天皇陛下だけそうはならないというのはおかしい。時代遅れだ」と発言し大きな波紋を呼んでいる。
私は女性天皇の是非と現実の皇位継承問題は切り離さなければならないと主張してきた。つまり、現在、皇太子殿下、秋篠宮殿下、悠仁さまという継承順位があり、いずれも、特段の支障は認められない。
そうであれば、この三人のあいだに別の人物を制度改正で入れることは、まったく無用な正統性への疑問と、国民世論の分裂を招くだけだ。
もちろん、昨日も指摘したように、皇太子殿下、秋篠宮殿下の五年という年齢差を考えれば、制度通り運用すれば、秋篠宮殿下の超高齢での即位と短期での交代が予想される。そこで、皇太子殿下から秋篠宮殿下への早めの譲位か、逆に、皇太子殿下から悠仁さまへの直接継承を選択肢に入れるべきだと思うが、それは正統性についての議論も世論の分裂も招かない。
いずれにせよ、すでに皇嗣としての教育が進みつつある悠仁さまを排除するのは著しく疑問である。
ただし、今上陛下の孫世代の男系子孫が悠仁さましかおられないことは、皇室制度の将来を危うくするし、テロなどの危険も増大してしまう。
そこで、悠仁さまに男系子孫がいない場合への備えをすることは好ましいことだ。また、公務などの担い手がいないことも深刻な問題である。
旧皇族の復活と女性宮家論議は同時並行がいちばん無難
それでは、候補者はどうなるかといえば、女性皇族・女系子孫と戦後に臣籍降下された旧宮家の子孫しかない。
そして、問題は女帝女系論者も、旧宮家復活論者も、もう一方の可能性を封じることにばかり熱心であることだ。
私はコンセンサスが得られるのは、この二つの可能性の両方を同時並行で追及することしかないと信じる。
そこで、まずは、皇位継承と切り離して、公務について、宮内庁参与のような形で、黒田清子さまなど結婚された女性皇族出身者や、旧宮家の関係者に分担してもらうのが良いと思う。
海外では結婚した王女が公務を盛んにやっている。旧宮家の方は、伝統行事や寺社とのお付き合い、御陵への参拝などには最適だし、海外経験豊かな方も多いのでいろいろお願いできることもある。海外では元皇族などがプリンスや爵位を名乗ることは普通のことだ。
そういう形で、皇位継承予備軍の形成を図り、その次に検討してよいのは、廃絶した、あるいはしそうな宮家を女性皇族の子孫や旧宮家子孫による継承だ。旧宮家については、猶子のようなかたちでの継承なら伝統的な皇室のあり方に沿ったものと言える。
戦後、消えた宮家には、秩父宮、高松宮,桂宮があるし、常陸宮や三笠宮、高円宮も後継者がいない。こうしたところを復活するというのはそれほどの違和感はあるまい。
ここで女系皇族の子孫と言ったのは、たとえば、愛子さま、眞子さま、佳子さまなどはいいとして、民間人の男性を皇族にすることは国民にとって違和感が強く、伝統にも反するからだ。それに対して、女性皇族の子供や孫が廃絶した宮家を継ぐことには違和感が少ないはずだ。
また、旧宮家は南北朝時代に分かれた伏見宮家の子孫なので遠すぎるという意見もある。しかし、フランスでもアンリ四世の即位のような非常に遠い男系での継承はあるし、旧宮家の男系子孫で女系で明治天皇の子孫という人もかなりの数いるから、そうした人なら抵抗はより少ないだろう。
私は男系絶対論と女系容認論の中間派だ。つまり、女性天皇を認めるとすれば、伝統的な男系主義で継承が出来ないとか、明らかに、不適切とかいうときに原則を拡張するのはいいと思う。しかし、従来の原則で適任者がいるのに原則を変えれば、正統性、ありがたみがなくなってしまうわけで、それこそ皇室制度の危機を招くだろう。
スペインでは、19世紀のフェルナンド7世に王子がなかったので、弟のドン・カルロスを後継にすべき所を、無理に娘のイサベル王女んじ継がせたので、カロリスタ戦争という内戦となり、いまも、その後遺症は残っているのだ。そういう例は世界各国に多いのである。
※画像は、AFPBB NEWSの動画より引用(アゴラ編集部)