築地市場移転問題

岡本 裕明

私の小学校時代からの親友に水産関係の事業をやっている人がいます。彼とは年に数回飲んでいろいろな話をしますが、1年ぐらい前に築地市場の移転の話を延々と述べていたのを覚えています。ポイントは二つあり、一つは移転に伴い、コストが大幅に上がるため、移転できない業者が相当出てきていること、その為にそのギブアップする権利を争うように取得する動きがあること、二つ目は新しい豊洲市場の使い勝手が悪いなど、移転に消極的だという点であります。

彼は市場がある日は毎日築地に行っていますからその情報と使い勝手の話は間違いないのでしょう。

その移転日が11月7日にセットされている今になって小池百合子知事の「待った」がかかるのか注目されています。小池知事の疑念は土壌汚染調査がまだ進行中なのに移転ありきのそのスタンスであります。11月18日から始まるモニタリング調査が話題になっていますが、この結果が出るのはどう見ても年明け1月から2月でしょう。但し、このモニタリング調査が豊洲の基本的存在を否定する試験ではないと思うのでこの調査を理由に移転延期する意味もない気がします。(逆にそうであれば工事を許可した都の責任はとてつもないものになります。)

小池氏の戦略は移転に伴う様々な週刊誌が喜びそうな都連のギトギトした話をほじくり返すことによる都議会の実態をあからさまにし、解体的立て直しをするための戦略のようなものに見えます。築地市場は閉鎖がありきで豊洲にさっさと移転せよ、というスケジュール感になっています。理由は築地市場の跡地に環状2号線(オリンピック道路)が通過するためでその工事はマストであるからであります。

つまり、様々な観点から見て築地という日本の胃袋を守るという理由よりも他の理由が先にありき、で無理な力が常に背後で働いていた気がするのです。そこには市場で仕事をする人たちの声を反映した新しい市場ではなくて偉い先生方が生み出した5000億円以上もかけた巨大な構築物で「精」がそこに注入されていない状態にあるのでしょう。それゆえに今の築地から動きたくないという市場関係者が大半であるという調査結果が出てくるのであります。

その意味では移転プロジェクトそのものが失敗していると言わざるを得ないのですが、ここまで来て大幅な変更も難しいでしょう。噂される様々な利権もありそうです。

私ならどうするか、ですが、週刊誌などマスコミの力も借りてこの問題を国民に広く知ってもらったうえで癒着や利権が立証できるならそちらにまずは矛先を切り、かつての膿を出すことからスタートするしかなさそうです。その上で関係者やチームのメンバーを変えた上で移転はそれなりのうちに行い、新市場で改善できるだけのことをしていくのはどうでしょうか?

築地で働く人たちは堅気な方が多いとともに年齢も上がっています。新しいところに移るのはそれなりに精神的抵抗はあるでしょう。ギブアップする方が多いのは赤字経営者が4割以上にも上っているという現状もあります。ドライな言い方をすれば赤字経営を続ける零細企業というのは本来ないはずです。赤字が続くのなら出資なり追加融資を受けなければ存続不可能ですが、それだけの赤字会社がそれなりにやっていけるというのは決算を赤字にしている日本の独特の習慣から来るもののようにも思えます。

つまり、築地の人たちに若干の甘えがあることも事実ではないでしょうか?

私はこの問題を外から見ていて懸念されるアングルが多く、一筋縄にはいかない厄介な問題だと思っています。ただ、複雑に絡み合った問題もキーとなる一点を崩すとガタガタとコトが動くこともあります。小池知事にとって最初の難関となりますが、ここをどう乗り切るかが今後の小池体制の位置づけにもかかわってくることでしょう。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月31日付より