米8月雇用統計・NFP、利上げにゴーサインを出す数字?

雇用統計

いよいよ、米8月雇用統計の発表を迎えます。

非農業部門就労者数(NFP)をめぐり、ブルームバーグのエコノミスト予想平均は前月比17.5万人増でした。6~7月を下回りつつ、巡航速度をたどる見通しです。

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録やFed高官の発言で確認できるように完全雇用はほぼ達成されたと考えられるなか、9月利上げにゴーサインを出す数字はどの水準にあたるのでしょうか?

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長がジャクソン・ホール会合で「利上げの論拠が高まった」と語りました。その論拠として「労働市場の堅調な(solid)パフォーマンスと成長見通し、インフレ動向」を指摘。つまり雇用指標や成長率が「堅調」すなわち加速していなくとも、利上げが可能とのシグナルを送ったように見えます。2015年末には「10万人増」への減速に言及した通り、多少の鈍化局面でも利上げを継続する意思をちらつかせた格好です。タカ派寄りであるダラス連銀のカプラン総裁(投票権なし)も適正水準は「12.5万人増」程度と述べるなど、NFPの鈍化局面でも利上げできるとの姿勢を打ち出していました。

ここで、米8月雇用統計・NFPのエコノミストの予想内訳を確認していきましょう。

NFP
(作成:CNBCよりMy Big Apple NY)

ご覧の通り、15万人超えの巡航速度を見込む声が優勢でした。仮に米8月雇用統計・NFPが15万人増だった場合でも年初来平均値は18.2万人増と金融危機前の2004~07年の平均値16.2万人増を上回る公算です。

さらに、多少弱含んでも特殊要因を考慮すれば9月利上げが可能との見立てもあります。ゴールドマン・サックスによると、8月の数字は季節要因もあって下振れしやすく、後に上方修正される傾向が高い。景気回復が鮮明になった2011年以降、発表値は市場予想を平均4.9万人下回り、上方修正の平均は7.1万人に及んだといいます。

NFP以外に賃金の伸びや労働参加率、不完全失業率など質的な改善を確認する必要があります。しかし、忘れてならないのはマーケットの反応でしょう。市場が追加利上げを見越して急落した時こそ、「世界経済と金融市場動向を注視し続ける」Fedが利上げに消極的となりかねません。利上げのカギを握るのは、NFPなど経済指標はもちろん、市場関係者の動向とも考えられるのではないでしょうか。

(カバー写真:Scott Beale/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年9月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。