【映画評】スーサイド・スクワッド

渡 まち子
Ost: Suicide Squad

迫りくる世界崩壊の危機を前に、政府は服役中の悪党たちによる特殊部隊“スーサイド・スクワッド”を結成する。命令に背いたり、任務に失敗したら彼らの体内に埋め込まれた自爆装置が作動する仕掛けだ。減刑と引き換えにこの自殺に等しい任務を引き受けた悪党(ヴィラン)たちは、図らずも正義のヒーローに。正義感も団結力もやる気もない寄せ集めの悪党たちは、世界を救うことができるのか…?!

DCコミックに登場する悪党たちがチームを組み、世界を脅かす敵と戦うアクション・ムービー「スーサイド・スクワッド」。バットマンやスーパーマンに逮捕され投獄されたメンバーが作品の垣根を超えて集結しているのは壮観な眺めだ。だがこの映画、予告編が面白すぎて期待値を高めすぎてしまったせいか、どうにも物足りない。何しろ悪党(ヴィラン)といってもほとんど凶悪さは感じないいい人キャラばかりじゃないか!そもそもリーダー格の凄腕スナイパーのデッドショットを演じるのはウィル・スミスで、彼に悪役なんて無理な話である。他キャラも悪と呼ぶにはほど遠い。ヴィオラ・デイヴィス演じる政府の指揮官アマンダの極悪非道ぶりに比べたら、カワイイものだ。

だがそれらすべての不満を蹴散らしてくれるキャラが、キュートな悪カワ・ヒロインのハーレイ・クインである。この映画、大スターのウィル・スミスでもなく、史上最悪の悪党キャラのジョーカーでもなく、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインを前面に出して宣伝していることからもわかる通り、ハーレイ・クインでもっている映画といっても過言じゃない。元精神科医という知性派にもかかわらず、愛するジョーカーのことしか頭にないぶっ飛んだヒロインは、セクシーかつクレイジーな魅力で映画を引っ張り、最後には驚きの大活躍もみせてくれるのだ。面白キャラを活かしきれてない雑な脚本だが、ハーレイ・クイン1点突破で許そう!
【60点】
(原題「SUICIDE SQUAD」)
(アメリカ・カナダ/デヴィッド・エアー監督/ウィル・スミス、ジャレッド・レトー、マーゴット・ロビー、他)
(ヴィラン:★★☆☆☆)


編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。