野田幹事長は敗戦処理と再生には最適という皮肉?

八幡 和郎

「自分の政治人生の落とし前を付けるつもりで、火中の栗を拾う決断をした」とあいさつした野田佳彦幹事長。蓮舫支持派は唖然呆然。騙されたと大騒ぎである。2012年の総選挙のA級戦犯だけに怒りは当然だし、もともと党内再右派だけに、安保法制のときから極左的主張に走っていた岡田・枝野執行部やそれを支持する左派の人たちにとって虚脱感が強いと思う。

しかし、私はここは前向きに受け止めている。

二重国籍問題を私が蓮舫を追及をしたのに、民進党を攻撃する意図はまったくなかった。そもそもは、一国のリーダーに日本文化に愛着もなければ忠誠心も感じられない人物をするのは世界的には非常識だというのが原点で、その究極的な裏切り行為として重大な法的義務に反し、しかも、秘密の二重国籍があったわけだ。(このことはまた詳しく論じる)

しかし、野田佳彦が派閥の領袖として蓮舫を代表候補として仕立てたのには、それなりの展望があったと思う。

もともと民主党を結党した人たちの願いは、日本に健全で政権担当能力があるアメリカの民主党のような「中道左派」を主軸にした党をつくろうということだったはずだ。

しかし、極左的な非現実性から脱却しきれなかったがゆえに失政を繰りかえし政権を失った。そこで、正しい道は、正しく民主党政権の反省をし、理念に酔うばかりでなく、現実的な問題解決力の高い政党に変身することだった。

安保法制を機に、国会で呼んだ自民党推薦の憲法学者が違憲だといったという面白おかしいが些細な手続き的ミスを針小棒大に取り上げて、もともと岡田克也自身も含めて集団的自衛権に否定的でなかったにもかかわらず、そこを攻めることに一点勝負した。

いってみれば、城門が一つミスで開いていたのを見て共産党など信用できないのも仲間にして三の丸に突入したが退路をたたれたような格好なのが今の民主党だ。

そういうなかで民進党内は、岡田克也のような本物の愚か者は別として、一部の中道的な価値で妥協するよりも筋を通しながらの旧社会党的万年野党でもいいと言う勢力と、なんとか中道路線に戻ろうという人に分かれていると思う。

今回の代表選挙の風景は、この二つの流れが複雑な形で交錯したのだと思う。野田が考えたのは、人気抜群で帰化人(この問題が起きるまではそういう言葉で認識されていた)で女の蓮舫なら極左系の中韓迎合派や人権派も受け入れやすい。

一方、蓮舫は華人としての意識が強すぎるという致命的な欠陥はあるが、そこを除くとむしろ、自分は保守だと叫ぶほどの新自由主義者だし、国際政治が甘くないのも華人的な感覚からだが分かった人だ(安倍首相とオバマの広島訪問を絶賛したのはその表れ)。それを野田は操って徐々に民主党を正常化しようと思ったのではないか。

逆に前原、玉木のほうは、より真っ直ぐ、民進党の中道化を訴えた。そこに、小沢一郎の影があるという人もいる。特に二重国籍問題で日刊ゲンダイが告発側を、勝手に変な意図があると揶揄しつつ蓮舫に厳しいのを見るとそんな気もする。

小沢一郎のいつもの手口から見れば、自分の言うことを聞かない岡田や野田を揺さぶろうとしただけかもしれないが、それと同時に、共産党との連携路線が参議院選挙や都知事選挙で限界があることがはきりしてきたので、少し別の動きをしてみようということかもしれない。

どちらにせよ、蓮舫の早期辞職は避けられそもないなかで、喜んで幹事長など引き受ける人はいないし、蓮舫にとっても「信用できる」数少ない人物だから野田でいいのだと思う。

あとは損切りして、民進党も蓮舫も出直す気に早く決断をすべきだ。

蓮舫については、どうせ、現在の経緯についての説明など、すぐに修正しなければならないし、二重国籍そのものは重大な法的義務に反するとはいえ罰則はないが、二重国籍が事実と分かったいま、様々な法令違反の可能性が生じるとある警察OBが言っていた。とくに、台湾の人には、「ひとつの中国」発言を撤回して「謝って」欲しいものだ。

それ以上に台湾人、謝蓮舫の名にふさわしい行為はない。

追伸:きょうの「ウェイクアップ」で辛坊が「村田蓮舫」にどうしてしないかといったことをいったがはぐらかされたようだ。私だって「蓮舫」が本名なら揶揄などしない。村田蓮舫が本名なのに蓮舫だけにこだわるのは、バラク・フセイン・オバマがフセイン米国大統領と呼ばれたいといって大統領選挙に出るのと同じように国民は変だと思って良いと思う。