一言に保育と言っても保育も色々、関わり方も人それぞれ。読者の方の保育にまつわるエピソードをご紹介する「保育とわたし」。今回はご自身が子どもの頃に、お母さんの里帰り出産で祖父母の家に預けられた経験がある、20代独身女性のエピソードです。
当時まだ3歳でしたが、いまでも「謎のオレンジトースト」はうっすら記憶にあるそうです。「謎のオレンジトースト」とは一体何なのでしょうか。
”イクメンやイクジイという言葉が出てくるずーっと前、25年近く昔の話です。当時私は3歳。保育園を休んで母の里帰り出産に付いて、田舎の祖父母の家に帰省していました。お母さんと離れたくない状態がすさまじく、連れて帰って来ざるをえなかったようです。母の入院は1ヶ月にもなりました。「ちょっとの間だけだから」と言われていた私は寂しさが更に募り、お見舞いに行けば帰り際にはフロア全体に響くような声で大泣き……入院していた他のお母さんたちを涙ぐませるような、それは強烈な泣きっぷりだったとのこと。
その時の母代わりは田舎の祖父母でした。
当時からふたりともフルタイムで働いていたので、かわりばんこに有給休暇を取っては、何かあればすぐに涙腺崩壊する3歳児の世話をしてくれました。
特に祖父は大活躍だったようです。
祖父も祖母もどうしても有給休暇が取れない日は、職場に連れて行って一日を過ごさせてくれました。
母がよく作ってくれていた「フレンチトーストを食べたい!」という孫娘である私のわがままには「オレンジトーストってなんだ!」(昭和初期生まれの祖父にとっては初めて出会う言葉で、聞き取れなかったらしい)とぼやきながら母や料理本からレシピを学び、毎日のように作って一緒に食べてくれました。
当の私は25年経った今、病院で大泣きしたことは全く覚えておらず、祖父の職場で知らない大人に囲まれてどきどきしながら過ごしたことやフレンチトーストづくりが楽しかったことなどをぼんやりと記憶しています。短い間だったけど、祖父はイクジイの先駆けだったのかもなぁと思うのでした。
今でもフレンチトーストを見ると、「謎のオレンジトースト」と格闘し、その後ことあるごとにそれを誇らしげに話す祖父の姿が目に浮かんできます。”
※登場する場所・名前・所属などは編集部により架空のものに差し替えています。
フレンチトーストのことだったんですね(笑)。楽しそうに話すおじいさんの顔が浮かぶほっこりした羨ましいエピソードですね。日本全体で核家族化と住まいと職場の分離が進む昨今。このようなエピソードは珍しくなってくるのかもしれませんね。性別も世代も関係なく、住む環境にも働く場所にも関係なく、みんなが子どもの笑顔を溢れさせるような社会にしていきたいものです。「謎のオレンジトースト」は1個の答えかもしれません。
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編集部より:この記事は認定NPO法人フローレンス運営のオウンドメディア「スゴいい保育」より、2016年9月14日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「スゴいい保育」をご覧ください。