どうも新田です。千葉ロッテマリーンズがクライマックスシリーズに出場する前に、親会社のお家騒動のほうが本日、新たなクライマックスを迎える可能性があります。兄を追放し、父から経営の主導権を奪った重光昭夫氏(ロッテHD副会長&韓国ロッテ会長)が、きょう韓国の検察当局に事情聴取されることが、先ごろ明らかになりました。
ロッテの疑惑 創業者次男を20日に聴取=韓国検察(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国ロッテグループの裏金疑惑などを捜査しているソウル中央地検が20日午前、グループ創業者・辛格浩(シン・ギョクホ、日本名:重光武雄)氏の次男、辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)韓国ロッテグループ会長を呼び聴取を行う。同地検のロッテ捜査チームが18日、明らかにした。
いよいよXデーになるのか⁈
韓国当局がロッテグループへのガサ入れを仕掛けたのが6月。最初は別件で創業者長女が逮捕され(のちに横領で起訴)、その後、子会社のロッテ物産社長も逮捕(のちに脱税で起訴)。韓国ロッテの中枢メンバーに対する事情聴取も進んでいたところ、8月下旬、韓国ロッテの副会長が自殺をするという展開になり、騒ぎがますます大きくなっておりました。
検察当局が事情聴取の日を事前に公に発表するというのは、日本の特捜部案件だと考えられませんが、検察当局としては満を持して昭夫氏をお出迎えする準備が整っている、とみていいでしょう。朝日の記事では「被疑者として事情聴取する」ということが明言されており、事態が大きく動く可能性があります。
ちなみに、韓国紙や朝日は、ソウル中央地検の発表を元に書いてますが、読売はなぜかロッテ関係者をソースとする記事を配信しています。捜査される側から聞いた話で捜査の動きを書くというビミョ〜な記事からして、かの地での取材が進んでいない可能性を懸念させるものの、読売の記事は朝日より踏み込んでおり、「捜査の進展次第ではロッテの経営に大きな影響を与える可能性がある」と書いております。なんだか奥歯にモノ挟まった言い方してますが、これを翻訳すると「逮捕されたら経営に大きな打撃があるかもしれないよ」という本音が見え隠れしているんじゃないでしょうか。
仮にそうした事態に至った場合、お家騒動の行く先は全く不透明になります。ここまでの韓国当局の動きを見ていると、任意での事情聴取対象の人に対しても限りなく黒に使いグレー扱いをやっておりまして、丸一日かけて事情聴取するなぞ当たり前という人権蹂躙ぶりを遺憾なく発揮しております。
場合によっては聴取が翌日未明にまで及んで、新聞記者の皆さんが朝刊最終版の締め切り時刻をにらみながら「何か動くのではないか」と、やきもきする展開もあり得ます。
ただ、強制捜査するのか、それとも少し間延びさせるのか、当局が証拠をどこまで積み上げているかがカギになりそうです。
いわゆるXデー的なものになるのか、そこは正直わかりませんので、ロッテグループの今後とか、先日フジテレビの情報番組からの取材で問い合わせがあった経営や消費者にどのような影響があるかといった話は、事態の推移をヲチした上で、論評してみたいと思います。
父と兄も立件されるのか?
そういえば、その番組スタッフからの問い合わせもあったのですが、一連の捜査では、創業者の父、武雄氏、兄の宏之氏も捜査対象になっていることが報じられております。これについても、触れておきましょうか。
ご存知の通り、日本ロッテの経営を任されていた宏之氏は、昭夫氏一派に追放されて、ここまで再三経営復帰を目指しているものの、3月と6月の株主総会ではいずれも失敗に終わっております。その後、夏に韓国に出かけた際に、出国禁止処分とされ、「業務実態がないのに韓国ロッテグループの系列会社の理事になって報酬を受け取っていたことはけしからん」などと横領容疑で事情聴取されておりました。
産経が韓国紙を引用する形で「容疑の一部を認めた」などと報じちゃったせいか、番組のスタッフさんから「宏之氏も逮捕されちゃうんですか?」と質問されてしまったんですが、それは早合点と言えそうです。というのも、こちらで取材した限りでは、それらの報酬支払いは各社の取締役会で正式に機関決定の手続きを経ていたらしく、韓国内の財閥憎しの世論のガス抜きを図ったように仕向けた的な見方も一部にはあるようです。
また、武雄さんについても内縁の妻と娘に相続した株を巡って、脱税容疑がかけられているようですが、ロッテホールディングスの株は上場してませんし、検察当局が見積もったような6000億ウォン相当もの価格があったのか、こちらも微妙じゃないっすかね。
テレビの若手スタッフ向けの参考書
FACTAもそこらへんの情報を仕入れていたと見られ、10月号では武雄さんについて「脱税工作を指示できるだけの知識はない」とする日本ロッテ元役員からの情報を伝え、総じて「宏之と武雄が逮捕・起訴までされるかはかなり流動的だ」と指摘しております。FACTAにしては優しい筆致だ(笑)。
ちなみに、ここまでの騒動がどうなっているのか、上司の命令で慌ててリサーチすることになったマスコミ関係者(特にテレビの報道・情報番組の若手スタッフさん)のために参考書をアドバイスしておくと、初心者向けは今月発売のリベラルタイムに書いた拙稿をどうぞ(宣伝ですみません)。
で、中級・上級者向けにディープだけど知っておいたほうがよい情報については、このFACTAの10月号と、ZAITENの7月号にあるロッテの記事は、ここまでの構図を詳しくかつほぼ正確に書いている印象がありますのでご参考までに。あと親子間の愛憎劇に興味があるワイドショーのスタッフさんには、今年3月に週刊ダイヤモンドが報じた肉声テープの誌上公開記事がございます(電子版はこちら)。
というわけで、コメント取材がまた増えそうなので、あらかじめ上記の資料はヲチしていただきたいと思いつつ、まずは昭夫氏の本日の事情聴取がどうなるか見守りたいと思います。ではでは。
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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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