ローマ・カトリック教会で最もよく知られたエクソシスト、ガブリエレ・アモルト神父が16日、ローマの病院で肺疾患のため亡くなった。91歳だった。イタリア北部のModenaで生まれたアモルト神父は悪魔祓いに関する多くの著書、インタビュー、講演で世界的にその名を知られていた。同神父によると、「1986年から2010年まで7万回以上のエクソシズム(悪魔祓い)を行った」という。
アモルト神父は1994年、「国際エクソシスト協会」(AIE)を創設し、2000年までその責任者を務めた。バチカン法王庁聖職者省は2014年7月3日、AIEをカトリック団体として公認している。AIEには公認当時、30カ国から約250人のエクソシストが所属していた。
アモルト神父は英日曜紙「サンデー・テレグラフ」とのインタビューの中で、「自分は毎日、悪魔と話している」と述べている。神父がラテン語で話しかけると、悪魔はイタリア語で答えたという。また、バチカン放送とのインタビューの中では、イスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)は「サタンの業だ」と述べている。
悪魔祓いを行うアモルト神父の言動にはカトリック教会内で批判の声が絶えなかった。ローマ・カトリック教会の聖職者、神学者の中には「悪魔の存在」について「神の存在」ほど真剣に考えない傾向がある。例えば、旧約聖書研究者ヘルベルト・ハーク教授は、「サタンの存在は証明も否定もされていない。その存在は科学的認識外にある」と述べ、エクソシズムに対しても慎重な姿勢を取っている。それに対し、アモルト神父は、「教会が悪魔祓いを止めれば、マギーやセクトにそれを委ねることになる」と警告を発していた。
聖書には「悪魔」という言葉が約300回、登場している。有名な個所としては、「悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていた」(「ヨハネによる福音書」13章2節)、十字架に行く決意をしたイエスを説得するペテロに対し、イエスは「サタンよ、引きさがれ」(「マルコによる福音書」8章33節)と激怒した聖句がある。多くのキリスト信者はイエスを信じながら、イエスが戦った悪魔の存在を信じないのだ。
バチカン法王庁は1999年に、1614年のエクソシズムの儀式を修正し、新エクソシズム儀式を公表した。それによると、①医学や心理学の知識を除外してはならない、②信者が霊に憑かれているのか、通常の病気かを慎重にチェックする、③秘密を厳守する、④教区司教の許可を得る―など、エクソシズムの条件が列記されている。
バチカンが新エクソシズムを公表した背景には、霊が憑依して苦しむ信者が増加する一方、霊の憑依現象と精神病との区別が難しくなり、一部で混乱が生じてきたからだ。霊の憑依現象と精神病の相違として、「精神病患者の場合、祈祷に反応を示さないが、霊に憑依された人の場合、祈ると激しく反応してくる」といわれている。
なお、ローマ・カトリック教会で過去、有名なエクソシストとしてアモルト神父の他に、前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世、べネディクト16世から破門宣告を受けたザンビア出身のエマニュエル・ミリンゴ大司教らがいた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。