写真左が松橋良紀/in台湾
「話すのが苦手」「面白いことをなかなか言えない」。最近のビジネスパーソンは会話が苦手と言う人が少なくない。コミュニケーションの専門家である、松橋良紀(以下、松橋)は、その難しさについて次のように述べている。「実は昔の私も同じような悩みを抱えていたので気持ちは良くわかります」。今回は、話し方のスキルについて聞いた。
■会話上手は誰もが知っている後出しジャンケン
松橋は、自身の会話が苦手だった頃について次のように述べている。
「松橋君の言いたいことは、さっぱりわからない」
「だから何?なにが言いたいの?」
「面白みがないね。話がつまらないなあ」
「いつも暗いな」
「以前の私はこのように散々な言われようでした。このような指摘を受けるので余計にしゃべらなくなりました。ですから、もともとネガティブな性格が、さらにパワーアップ。みんなが笑っているのに何が面白いかわからず、ついていけませんでした。」(松橋)
話し下手な人、何を話せばいいかわからない人には特徴があるものだ。特に、低い評価をされないがためにと気張ってしまい、逆に気軽に雑談ができなくなってしまう。これでは、緊張が生じてかえって口が重くなるものだ。松橋は「お笑い芸人すべてが面白いでしょうか?そんなことはないですよね?」と次のように続ける。
「自分が面白くないと感じた芸人は、本当に面白くないのでしょうか?それも違います。自分には面白さがわからないだけで、どんなに少なくても面白いと感じる人がいるからこそ、芸人として存在しているはずです。‘面白い’‘面白くない’というのは、あくまでも人それぞれの感覚が違うということにしか過ぎません。」(松橋)
これは言い得て妙だが、たしかに相手が面白いと感じるツボを知ることなく、面白い話はできないだろう。また、自分にとって興味深い話は、相手にとって興味があるとも限らない。関心が無ければ単なる雑音に過ぎない。
では、相手が何に関心があり、何に興味があり、どんな話に食いついてくるのか?これを知るには何が必要なのか。松橋は、「相手に聞けば良い!」と次のように述べている。
「自分でペラペラしゃべっている限り、相手のことを知ることはできません。自分の話をするまえに、相手のことを知るのです。それは相手に聞くことです。ジャンケンで必ず勝つ方法があります。それは後出しジャンケンです。会話を後出しジャンケンにすればいいのです。会話を後出しにすれば負けることはありません。」(松橋)
「そんなの当たり前だ」と考えた人に補足をしておきたい。ここで一つのケースを提示したい。周囲に「会話泥棒」はいないだろうか。会話が下手な人ほど、相手の会話を盗んで不愉快な気持ちにさせる傾向が強い。※相手が会話泥棒の想定。
自分:「昨日、話題の××に行って来たよ!」
相手:「なんだ。僕はすでに先月行って来てねぇ」
自分:「で、どうだったの?」
相手:「○○でイマイチだったね。評判とはほど遠いね!」
自分:「へぇ~、そうなんだ」
相手:「当たり前だろ!知らないんだ。痛いヤツだなぁ」
自分:「はぁ~(若干意気消沈気味)」
相手:「そんなの常識だよ。うんちゃらかんちゃらで~ほにゃららで~~」
自分:「・・・」
このケースであれば、相手の会話を盗らずに最後まで聞いていれば、不愉快にさせることはなかっただろう。普通に「後出しジャンケン」をしていれば、会話がはずんだかも知れない。これは少々極端なケースではあるが、私たちのまわりには「後出しジャンケン」であれば生じなかったギャップが思いのほか多いことを知らなければいけない。
■失敗の理由は先出しジャンケンにある
相手がグーを出したら、自分はパーを出せば絶対に負けることは無い。でも、絶対に勝てるとわかっているのに、自分から先にパーを出せば、相手はチョキを出す。松橋は、コミュニケーションが下手な人ほど「先出しジャンケン」をすると述べる。
「コミュニケーションの下手な人は先出しジャンケンで失敗しています。売れない営業マンは聞きもしないことをペラペラとしゃべります。モテない人はペラペラしゃべり相手のツボをわからないのに自己アピールがはじまります。」(松橋)
コミュニケーションの極意は「後出しジャンケン」である。後に出すことを意識していれば負けることは無い。これができるようになれば、自然に相手のことも理解できて、相手に合った話ができるようになるのだろう。参考にしてはいかがだろうか。
参考書籍
『雑談の心理術』 (KADOKAWA)
尾藤克之
コラムニスト
PS
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