日本経済新聞の報道によれば、国土交通省が9月20日に発表した2016年7月1日時点の基準地価は、商業地全体で9年ぶりに上昇しました。その中でも札幌、仙台、広島、福岡の地方中核都市4市の商業地上昇率は6.7%となって、三大都市圏の2.9%より高い数字になりました(図表も同紙から)。
一方の住宅地は25年連続の下落が続いていますが、7年連続で下げ幅を縮めてきており、下げ止まりの気配が強くなっています。
商業地が値上がりしているのは、マイナス金利と外国人訪日客の増加期待が背景にあると言えます。東京都心部では既にその影響から価格が上昇してしまい、「利回り」から見て妙味が薄れてきています。そこで、収益性が高く出遅れ感のある地方都市に投資資金が流入している状態です。
住宅地は商業地とは購入する主体が異なります。自分が住むマイホームとして購入する人たちには「利回り」という概念はありません。一般の勤務者であれば、年収から住宅ローンの返済をしていくことになります。年収と不動産価格の比較が購入に影響するのです。賃金が上昇せず、住宅ローンの金利低下も頭打ちですから、価格が上昇すれば購入できなくなってしまうのです。都心の新築マンションはその上限に到達し、割高感が出ています。
同じ住宅でも投資対象として考えている個人投資家は、「利回り」と借入金の差である「金利差」を強く意識しています。現状の東京都心部の不動産利回りは、中古ワンルームで5%前後、一棟ものになると6%前後のものが多くなっています。借入金利との利回り差は、借り手の信用力によりますが、3%~5%近くありますから、金利水準がこのまま推移すれば、必ずしも割高とは言えません。
昨日の日銀政策決定会合では、長短金利を誘導目標とした「イールドカーブコントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」と呼ばれる金融緩和の長期化が期待される政策が発表されました。できるかどうかは別として、長期金利をコントロールする姿勢を日銀が示したことで、不動産投資環境に関しては現状のポジティブな状況が続くことが期待できます。
不動産の動きを考える上で大切なことは、すべての不動産を1つにまとめて結論付けるのではなく、東京と地方、商業地と住宅地、住宅地の中の実需(マイホーム)と投資用というように、それぞれのカテゴリーの中で需要と供給がどうなるかを分けて考えることです。
例えば、広島の商業地のビルに投資するのと、東京の三鷹の一棟ものマンションに投資するのは、同じ不動産投資であっても判断材料は異なるということです。
私が投資を検討している東京都心の投資物件に関して言えば、非公開の情報でも売り物件がほとんど出てこない状況が続いています。飽くまで私見ですが、今回の日銀の政策変更によって、都心の収益物件に対するニーズは引き続き強いまま推移し、この傾向が当面続くと見ています。
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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。