写真は本人(上場企業の人事責任者であるため写真非公開)
管理職になりたくても、管理職になれるのは企業の中でも限られた存在であることは、統計からも明らかである。その競争に勝ち残るには何が必要なのだろうか。
今回は、ビジネスパーソンでありながら、ベストセラー作家でもあり企業向けの研修講師などをつとめる、中尾ゆうすけ氏(以下、中尾)に話を聞いた。
■管理職にはなぜマネジメント力が必要なのか
「上に行ったときに求められる能力はマネジメント力です。もちろん実績がなければ、そもそも候補に名前があがることはありません。近年、組織がフラット化して階層が減って、以前はどこの会社にもあった、係長とか、主任、チーフ、班長といった職位も減っています。そのため、管理職になる前の段階で、一定数の部下をもつという経験ができづらくなっています。」(中尾)
その結果として、マネジメント力のないまま管理職になってしまうケースが発生し総じて組織が弱体化している。最近では、マネジメント力のある者を管理職に昇進させたいという会社の思惑が強くなっているようだ。それでは、部下のいない組織の中堅社員はどのようにマネジメント力を磨けばよいのだろうか。
「直属の部下がいない場合、お勧めしているのは、新入社員の育成担当者になることです。自分から上司に了解を得ながら、積極的に面倒を見るのです。仕事を教えるのと同時にその管理をすることになりますので、たとえ上司、部下の関係になくとも、先輩・後輩という関係のなかでマネジメント力を磨くことができます。」(中尾)
その際の留意ポイントなどはあるのだろうか。
「気をつけることは、『自分自身の仕事の効率が落ちることを覚悟する』『一人前に育てるまで見放さないことを決意をする』ことです。相手は自分より経験の浅い新入社員ですから、「何もできないのが当たり前」という前提で指導しなければイライラが募るばかりです。一方で、自分自身の指導力やマネジメント力不足に対して、歯がゆい思いをするかもしれません。」(中尾)
担当にアサインされたら、これから身につけることの役割として虚心坦懐に、変なプライドをもたず、自分自身も勉強のつもりで努力することが大切なのだろう。ちなみに、新入社員以外ではどのような施策があるのだろうか。
「新入社員がいないときは、まずはマネジメントに関する研修を受けることです。社内の研修でもいいですし、なければ自分で社外の研修を探してもよいでしょう。通信制の研修や書籍を読むことも知識をつける意味では非常に有効です。発揮する機会はなくとも、知識をつけて、必要なときに使えるよう準備しておくことが重要です。」(中尾)
「番外編ですが、職場の飲み会の幹事を引き受けるという例もあります。そういう役回りは、新人の役目が多いと思いますが、私の知り合いの会社では、あえて中堅にまかせるといいます。」(同)
■会社にとって飲み会は重要な施策である
「飲み会の幹事というのは、雑にやれば誰にでもできますが、本気でやれば管理職に求められる能力を高めるためのよい機会です。幹事は、まず参加者のスケジュールを調整しなければなません。職場の飲み会で日程や参加者の調整をするのは、ちょっとした規模の会議を設定するよりも難易度が高くなります。」(中尾)
確かに調整役は結構な手間がかかることは間違いない。さらに、難易度の高いルールを設定しておけば教育効果は高まる。例えば、同じ店を利用してはダメ、喫煙と禁煙の割合が半々、イタリアン専門店だが焼酎が置いてあるなど、難易度を高くしておけば、予算や料理、スペースなどニーズに合ったお店を開拓しなければいけない。
「乾杯・挨拶の人選や事前の根回し、お店との交渉、お金の徴収に留まらず、余興などのイベントの企画・実施を取り仕切る・・・。これらは、ヒト、モノ、カネ、情報を自身の判断でコントロールし、手伝いをしてくれる人に指示をしながら、顧客満足(この場合は参加者)を実現するものです。飲み会の幹事という役割は、ちょっとしたビジネスの縮図ともいえるのです。」(中尾)
事実、中尾の話によれば、仕事のできる人は、飲み会の幹事としての能力も非常に高く、飲み会の幹事ができないような人は仕事もできないそうだ。組織には一定以上の成果を上げる人はたくさんいる。そのなかで抜き出るにはプラスαが必要になる。管理職は、部下に任せきりではなく、一度、難易度の高い飲み会の幹事を実践してみては?
『上に行く人が早くから徹底している仕事の習慣』(すばる舎)
尾藤克之
コラムニスト
PS
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