「私の誕生日ディナーを金曜日に予定しているの。来ない?」
木曜日にはNYに到着する予定だとアメリカ人の友人に明かした後、こんな返事が届いた。旅行で訪れるなら良いタイミング、と二つ返事で了承したことだろう。ただ、今回は違った。筆者がNYに急遽戻らねばならなかった理由は、家族の急死に直面したためである。金曜日に通夜、土曜日に葬儀という事実を、友人も知っていた。
慌ただしい日程をこなし、迎えたNY滞在最後の夜。家族と時間を過ごしていると、別の友人から「今夜会おう」と誘いが掛かった。翌日の朝7時に空港へ発つ必要があり、早い時間でなければ無理だと断っても「仕事の都合で早い時間はダメなんだ。午後8時にウィリアムズバーグはどう?いいレストランを見つけたんだよ。タクシーならすぐだよ」と畳み掛けるような返信がかえってきた。他に「ワインをたくさん買い込んできたの。1杯でいいから、一緒に飲もうよ」と強く申し出る者もいた。
彼らに悪気がまるでないことは、重々承知している。葬儀に顔を出してくれた者もおり、単に限られた時間に旧交を温めたかったのだろう。
こうした彼らの誘いを受けて、実感したのは希望実現へのストレートな意志だ。米大統領選の候補者支持にも、その強い意志が垣間みれる。例えばトランプ候補の支持者は、自身に還元されるであろう利益を強烈に感じ取って政策に賛同しているに違いない。民主党で旋風を巻き起こしつつクリントン候補に惜敗したサンダース候補も、公立大学の無償化を掲げたためここに利点を見出した支持者が集ったと考えられる。自然な流れであり、誰にも止められるものではない。少なくとも、米大統領選は11月8日の投票で結果が出るだけに有権者のストレートな意志の発露を見守っていく次第である。
(カバー写真:Thomas Hawk/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年9月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。