蓮舫新代表が解決しなければならない民進党の大問題とは?

田原 総一朗

tahara蓮舫さんが民進党の代表に選出された。1回目の投票で過半数を獲得しての圧勝だった。だが、代表戦の終盤、蓮舫さんの「二重国籍」が取り沙汰された。

蓮舫さんは、台湾国籍の父と日本人の母との間に日本で生まれた。当時の法律では、生まれた子どもは父の国籍になるため、台湾国籍として育った。17歳で、蓮舫さんは日本国籍を取得。父親とともに台北駐日経済文化代表処を訪れ、台湾国籍を抜いた、と蓮舫さんは思っていたのだ。

ところが、である。蓮舫さんの台湾国籍は抜かれていなかった。父親と役所の人間との会話が台湾語だったため、蓮舫さんは状況を理解していなかったのだ。つまり、日本国籍を取得した17歳のときから、ずっと二重国籍状態だったことになる。

この「二重国籍」問題で、蓮舫さんにさまざまな批判が起こった。参議院議員となり閣僚まで務めたのだから、「無責任だ」というものもあった。しかし、そもそも、それで何の問題もなかったのだ。だから、誰も気づかなかったわけだ。逆に、チェックできなかったシステムのほうに問題があるのではないか、とさえ思う。もちろん「中国は一つ」だ、という、台湾を国家として認めるわけにはいかない複雑な問題も背景にある。

いずれにせよ代表戦では、蓮舫さんの国籍問題を対抗馬である前原誠司さん、玉木雄一郎さんも追及しなかった。蓮舫さんは、堂々と代表に選出されたのである。

蓮舫さんとは、彼女がキャスターだったころからの付き合いだ。非常に聡明で、さっぱりとした人柄、会話をしていてもつかみがよく、持って生まれた「カン」を感じた。その力が見事に政治の世界で花開いた。

もう一つ、蓮舫さんのよいところは、物事を曖昧にしないことだ。わからないことはわからないと言い、イエスとノーをはっきりさせる。僕は、彼女のはっきり言い切りすぎるところが心配ですらあった。

さて、民進党は、いま、舵の切り方が難しい局面にある。旧民主党は、3年3カ月、政権の座にあったが、その後、4回の選挙で敗北している。それは、なぜか。1つめは、民進党に反省が足りないからだ、と僕は思う。一度は政権を取っておきながら、なぜ負け続けているのか、彼らが徹底的に議論しているとは思えないのだ。

もう一つは、経済の問題だ。これがいちばんの問題だと僕は思っている。一般的に欧米の二大政党の場合、「保守」対「リベラル」になる。保守は自由競争が基本だ。徹底的に経済競争をした結果、貧富の差が出るのはしかたないという立場だ。いわゆる「小さな政府」である。リベラルは逆だ。貧富の差を小さくするように、社会保障、福祉をなるべく厚くする「大きな政府」である。だから、リベラルが政権を取ると、どうしても財政難となる。すると、次の選挙では保守が勝つのだが、保守政権が続くと貧富の差が広がり、不満を持つ人が増えてリベラルに戻る。

ところが、戦後日本で、ほとんどの時期、政権を担ってきたのは自民党だ。自民党は、ちょっと特殊である。保守なのだが、社会保障にも手厚い、という政策をとってきた。いわば1つの党で、「保守」と「リベラル」の役割を両方担ってきたような党なのだ。だから、国の借金は1千兆円にも膨らんでしまった。

経済で、民進党がどういう色を打ち出すのか。安全保障では、右寄りの安倍政権に対抗しようとすると、憲法改正反対の立場をとらざるを得なくなる。だが、そうすると共産党との違いがよくわからなくなってしまう。いや、下手をすると社会党のように、衰退してしまう恐れもあるだろう。

蓮舫代表が、経済と安全保障で、いかに具体的な政策を打ち出せるか。民進党の存亡は、彼女の肩にかかっている。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年9月26日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。(アイキャッチ画像は民進党公式サイト2016年9月26日の臨時国会開幕ニュースよりアゴラ編集部で引用)