ども宇佐美です。
日韓両政府の間で「最終的かつ不可逆的に解決した」はずの、従軍慰安婦問題を韓国側が蒸し返しているようです。
韓国側の要求は安倍首相のお詫びの手紙ということで、これを「ケリがついたことをいつまでも。。。」と言って黙殺することは簡単なのですが、この際ここで従軍慰安婦についてもう一度考えて見たいと思います。
材料とするのは従軍慰安婦問題に関する研究の先駆者である千田夏光氏が毎日新聞編集の「一億人の昭和史」(1975年)に寄稿した「”従軍慰安婦”という悲しい存在」という論考です。
千田夏光氏の議論は必ずしも正確ではなくしばしば問題が指摘されていますが、それでもここでとりあげるのは病的な嘘つきとしてこの問題を混乱させた吉田清治氏が登場する以前の従軍慰安婦に関するいわゆる”告発側”の議論を知りたかったからです。以下この記事の概略です。(なお明らかに事実誤認と思われる情報は省いています。)
================
・「従軍慰安婦」とは軍命令により戦場へおもむかされ、将兵の性欲処理の相手をさせられた女性である
・従軍慰安婦制度が作られた動機は二つあった。
一つ目は中国戦線における日本軍の暴行・強姦・略奪が目にあまるもので外国人記者を通じて世界に広められ国際的に非難されており、軍の中で対策を求められていたこと。
二つ目はシベリア出兵の経験から将兵間における性病蔓延を軍が恐れていたこと。シベリア出兵では72000人の軍隊の中から、入院が必要な重症性病患者を2002人、戦闘に支障がある軽傷性病患者を14000人(推計)出しており、中国戦線で同じ轍を踏まないためにも対策が求められていた。
・こうした問題を解決するため、軍は衛生面を含めて完全管理した性病の心配が無い女性を将兵にあてがう仕組みを作るしかないという結論に達し、中央派遣軍の第11軍にまず”従軍慰安婦制度”を開設することとした。
・方法としては軍出入りの御用商人に資金をもたせて北九州に派遣し「前渡金千円(現在の価値で500~600万円程度)、これを全額返済し終わったら自由になる」「一人当たりの料金は二円(現在の価値で1~1.2万円程度)」という条件で募集した。これは日本内地の売春婦にはヨダレが出るほどの好条件であった。
・ただし性病の蔓延をおそれる軍の募集条件は厳しく、応募は殺到したがなかなか日本人の売春婦は合格しなかった。他方で朝鮮人は処女を含む民間人の応募があり合格率が高かったようだ。結果として総員120人が合格したが、そのうち20人は朝鮮人だった。
・1938年1月に(事実上の)軍直営の売春所が初めて完成した。その条件は「料金は一回あたり二円(現在の価値で1~1.2万円程度)、時間は30分、サック(コンドーム)着用の義務付け」だった。その後同条件で続々と各地に開設されていった。
・従軍慰安婦制度の開設による効果については東京裁判で「中国人婦女子にたいする暴行強姦は目に見えて減少した」との証言がある。つまり大きな効果があった。
・これを受け軍としては慰安所を増やす意思決定をして、軍は従軍慰安婦の確保に駆けずり回るようになった。するとこの情報に外国人記者が着目するようになり、軍としてはメディア対策が必要になった。
・そのためそれまでは「軍娯楽所」内で運営していた慰安所の運営管理を御用商人に任せることにした。ただしその後も衛生管理は軍が行い続けた。
・慰安婦は概ね兵隊35人に1人程度の計算で徴募されたので、10~15万人程度集められたと推計される。前述の通り慰安婦には当然ながら日本人も多数含まれていた。
・ただし慰安婦が増えていく過程で性病の既往歴が多い日本人売春婦は衛生上の観点から忌避されるようになり、性病の恐れが無い朝鮮人の若い女性が積極的に集められるようになった。
・徴募の手段は、初めは御用商人が職務内容に関してはっきり示さずに「兵隊の洗濯や炊事の世話をするだけ、それで高給と三度の食事が与えられるし、支度金も出る」と勧誘して歩くものだったが、これには駐在の警官も協力したようだ。
・こうした慰安婦の徴募方法は徐々にエスカレートしていき、軍の関与の度合いは上がっていった。太平洋戦争に入ると急速に慰安婦が多数求められるようになったので、徴用令をちらつかせる形で強引に集める例も見られたとの情報もある。
・日本人慰安婦のなかには「私たちみたいな売春婦でも、お国のために忠義ができるのだ」と語るものも多く一定のモチベーションが保たれていたようだ。中国雲南省では軍とともに玉砕した慰安婦も存在した。この際朝鮮人従軍慰安婦には投稿が促され米軍管理の捕虜収容所に送られた。
===================
みなさんご存知の通り従軍慰安婦に関する情報は誇張されたものが多く、以上に書かれた内容が必ず真実とも限りませんが、個人的には”数十万人の慰安婦狩り”のような荒唐無稽な印象はなく、現実味があるとは感じるところです。
私は慰安婦問題の専門家というわけではありませんが、日本の軍部が”間接的に”関与する形で韓国において大規模な慰安婦の徴用が行われたのは間違いないとは思うところです。特に太平洋戦争開戦前後は短期間に数万人規模の慰安婦を集めた計算になるので、軍の関与の度合いは高まり、一部では非人道的行為が行われたのではないか、と推測するところです。
ただだからと言って韓国のとめどもなく日本政府の謝罪や賠償を要求する姿勢も受け入れられるものではないので、なんとか日韓政府が合意する形で従軍慰安婦の方々がご存命のうちにこの問題に決着をつけてほしいと思うところです。
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2016年10月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。