第8回 沖縄国際映画祭「島ぜんぶでおーきな祭」

乾杯

第8回沖縄国際映画祭「島ぜんぶでおーきな祭」。
昨年までの宜野湾から那覇波の上うみそら公園にメイン会場を移し、全島9会場での開催です。昨年までの3月から海開きとなる4月開催となり、暑いイベントになりました。

昨年までのメモはこちらに。
2015年
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2015/07/blog-post_23.html
2014年
http://ichiyanakamura.blogspot.fr/2014/05/6.html

2013年
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2013/07/2013.html

2011年
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2011/05/blog-post_26.html
      http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2011/05/3_19.html

2010年

RC1

熊本・九州の震災発生から一週間での開催。この時期にどうよ、という声もあります。ですが、偶然とはいえまたも自粛ムード漂う中での祭典には意味があります。被災地に、全国に、元気を届けたい。

RC2

東日本大震災のときも、沖縄国際映画祭はその2週間後に開催されました。当時、開催に対し強い風当たりがあったと記憶します。でもLaugh&Peaceのコンセプトで断行したことは、内外に強いメッセージを発しました。今回も同じです。

シンポ

ぼくはガレッジセールさんとシンポの司会を務めました。
沖縄から海外に発信する力をどうつけるか。
吉本興業は既にクールジャパン機構の出資を得てMCIP ホールディングスを設立し、アジア展開に力を入れています。

大臣

島尻沖縄担当+IT・知財担当大臣(当時)は「芸能と文化の沖縄のパワーを被災地含め全国に届けたい」と発言。沖縄は国家戦略特区であり、その立場を活かそうというメッセージもありました。そうしましょう。

いろんな方から意見をいただきましたが、ぼくには何より、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどアジア各国へ成功するまで帰ってくるなと送り出された「住みますアジア芸人」諸君の悲壮な決意に、発信力の可能性を見ました。

映画祭に先立って、吉本興業はエンターテインメント人材を育てる学校を沖縄に開校すると発表しました。ダンスや漫才、演技だけでなく、衣装デザイン、照明技術などの講義も行うといい、世界から一流の講師陣を集めるといいます。

「吉本が沖縄に学校つくりまっせ 芸能のプロ育成」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160420-00000003-okinawat-oki

トニー賞

人を育て、場を作り、送り出し、産業を作る。厚みのある施策が必要です。
(トニー賞を3回受賞したというおじさん)

桜坂

さて、今回の目玉の一つは又吉直樹原作「火花」の特別上映。Netflixオリジナルドラマとして制作される全10編のうち、3編が上映されました。さて、Netflix上陸の実力やいかに。

と思いきや、驚きました。「良い邦画」です。キレのいいセリフ、緩急あるリズム感、抑えた色調、場末の日常。原作を超えますね。廣木隆一さんほか5人の監督が数話ずつ担当する、その違いも楽しみ。総合プロデューサーは岡本昭彦さんと吉崎圭一さん。

もう一つ注目したのは木村祐一「ワレワレハワラワレタイ」。芸人107組へのインタビュー集。芸人の本音、理念、苦悩、全てが語られていきます。キム兄だからこそ聞き出せる愛情あふれる映像です。坂田利夫・ノンスタ・月亭方正編を観ました。
http://warawaretai.com/

坂田利夫さん「アホの坂田」のせいで全国の坂田くんがいじめられ申し訳ないと思った証言。はい。あろうことかぼくには坂田利夫という名の同級生がいて、小学校の卒業式で名を呼ばれ大爆笑が起きたことを思い出します。でも「アホ」と呼ばれることにそんなに葛藤があったとは。

ノンスタイル。井上さんが経営者・プロデューサーで、ストイックで引きこもりがちなアーティストの石田さんがついて行っている、という構造だったんですね。だからこそ成立しているんだな。

月亭方正さん。山崎邦正として駆け出しのころ、松本人志さんから知らずに受けていた暖かい行為を一言語り、こらえた涙がブワっと吹き出す。キム兄も静かに涙を流す。素敵。劇場の最後列でたまたま隣に座っていた河本準一さんが、ぐひょぐひょブヒブヒ泣き出して驚いた。カッコいい。

月亭方正さんがインタビューで、子どものころのスターはお笑い芸人ばかりだったと語っていました。そういえば、ぼくもそうだな。
お笑い芸人さんへの尊敬を確認する映画祭でした。

屋台1

「こんな映画祭は他にない」。訪れる専門家はそう言います。私も毎年参加していますが、こんなイベントは例がありません。映画祭の多くは賞を与えておしまいの、業界の作り物ですが、ここは違います。監督も芸人も観客も、みんなで学芸会のように作り上げるお祭りです。レッドカーペットは700人が歩きます。

屋台2

内外の映画が集まり、世界に発信する。映像の他にも、お笑い、音楽、スポーツ、いろんなエンタテイメントがある。コンテンツのマーケットも新人発掘の場もある。クリエイターを教育する催しもある。大人だけでなく小学生も参加している。芸人やアーティストも当たり前のようにうろうろしている。

クローズ大崎

そして沖縄のいくつもの会場が使われ、全島41市町村のみなさんが寄り合って地域を活性化する。よくぞ「島ぜんぶでおーきな祭」という名前をつけました。スタート時、大崎実行委員長は「100年続ける」とおっしゃいました。今回で8回目。では、あと92回はがんばりましょう。

クローズ3

10月には京都国際映画祭です。実行委員長を務めます。翁長知事らご列席のクロージングで、ご挨拶しました。
「この熱気を、はんなりと京都に持ち込みたい。後輩の京都を応援しとくれやす。そして秋には、みなさん、京都に、おこしやす。」

イカスミ

イカスミソーメンチャンプルの向こうに てびちが見えます。

また近いうち。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。