テレビへの原点回帰はあるか。ネットTVの将来性を考える

尾藤 克之

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写真左はスタイリストの出澤希帆、右が水越浩幸(第322回)

総務省が発表している「民間放送事業者の収支状況」を読み解くと、既存メディアの衰退が顕著に現れている。特に広告予算の削減傾向が著しい。

このようななか、いま注目を集めているのが、インターネットTV(以下、ネットTV)である。10月5日に「AbemaTV」が、累計ダウンロード数が900万を突破したことを公表するなど、ネットTVは新しいメディアとして注目を集めていることが理解できる。

また、個人や中小企業によるネットTVも注目を集めている。ライブで生の雰囲気を届けられることに特徴がある。イニシャルコストが安いことで、多くの番組が開設されているが、成功するにはいくつかの秘訣があるようだ。

今回は、ネットTV「メディカツ(メディアコミュニケーション活用塾)」を運営する、水越浩幸氏(以下、水越)に効果的なネットTVの活用方法について聞いた。

■ネットTVにはどのような効果があるのか

――水越自身が運営する「メディカツ」はUstreamのライブとYouTubeのアーカイブの2つを利用している。動画は静止画やテキストに比べて数千倍の情報量があると言われている。これらを上手く組み合わせることで効果を飛躍的に高めているのである。

「ライブ配信ですから、よりリアルな雰囲気を伝えることが可能です。例えば、以前参加いただいた経営者の方は、話している内容がご自身の有料セミナーとほぼ同じと言ってもいいほどでした。社員の方が、『社長、そこまで言って大丈夫ですか?』とコメントしてくるほどだったのです。視聴者の皆さんは大喜びで、感動のコメントが続きました。」(水越)

――これが実際のTV番組であれば放送事故だろう。しかし動画TVでは、このような事故は日常茶飯事とのこと。水越は、このようなトラブルや事故が視聴者にとっての楽しみであり、むしろ喜ばれて盛り上がるそうである。

■「ありのまま」を伝える効果を考えてみる

――動画と言うと、ビデオカメラで撮影、パソコンで編集してアップロードという一連の作業が必要だと思い込み面倒と思っていないだろうか。

「わたしが皆さんにお勧めしている方法は、iPhoneや、iPadの動画活用です。これらApple製品をオススメしているのは、iMovieという優秀な動画編集アプリが使えるからです。これを使うことにより、撮影、編集、YouTubeへのアップロードが、一つの端末のみで完結できます。」(水越)

「また、YouTubeに動画をアップロードすると、数時間から数日でGoogleの検索結果に反映されます。検索結果に出てくるYouTube動画は、サムネイルが付いているため検索が容易で目立ちます。検索結果の上位に出したいと思ったなら、まずはYouTube動画から始めてコツを覚えることが得策です。」(同)

■「初めての再会」とはなにか?

水越が運用しているメディカツは2010年5月に配信を開始した。番組の配信回数は、これまでに333回(2016年10月18日現在)を数える。

主な出演者は、「なんでも鑑定団」でおなじみの北原照久、歌手の岩崎宏美、異邦人で有名な久保田早紀、シンガーソングライターの杉真理、元巨人の篠塚和典、漫画家のかわぐちかいじ(順不同、敬称略)などの著名人も多数ゲスト出演している。なぜ多くの人に支持をされるのだろうか。その秘訣を次のように答えている。

「番組は毎週1回配信するのですが、出会う人が、笑顔でこう言うのです。『いやー、初めて会った気がしません!』。初めて会ったのに、初めてのような気がしない。初めなのに、まるで再会したような感覚を覚えました。わたしはこれを『初めての再会』と称しています。」(水越)

動画は、「声」「表情」「話し方」などから、その人の雰囲気をつかむことができる。番組を繰り返し視聴することで会ったことがあるような錯覚に陥るのだそうだ。「初めての再会」。ぜひ覚えておきたいキーワードである。

■本日のまとめ

「他にも、ランチ会や交流会の開催が効果的です。ランチ会には、知り合いのセミナー講師や著者をゲストで呼ぶことで、参加者が増えて満足度が高まるなどの効果が期待できます。リアルで会うことで、つながりは深くなり、さらに広がっていくようです。」(水越)

かつてインターネットの黎明期がそうだったように、これからの個人や中小企業では、ネットTVを上手に活用する方法がスタンダードになるかも知れない。今後のネットTVの動きに注目したい。

参考書籍
これからの中小店は「動画」で販促・集客しよう!』(同文舘出版)

尾藤克之
コラムニスト

PS

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