共和党のドナルド・トランプ候補は、2015年6月に出馬表明してから世間を驚嘆、衝撃、熱狂の渦に巻き込んできました。さながらブロードウェイさながらに、トランプ候補の独壇場はロングランを続けています。
11月8日の米大統領選で仮に敗北したとしても、Show must go on. ショーが幕を下ろす気配はありません。
なぜなら、トランプ候補が敗北を認めないリスクが浮上しているからです。クリントン候補が勝利する確率を90%と算出するニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、そのような示唆を与えました。トランプ候補は第1回目の討論会で民主党のクリントン候補が次期大統領に選出された場合に「絶対に(absolutely)」支持すると発言しましたが、撤回を検討しているといいます。
クリントン候補のリードは、17日時点で5.5ポイント差(47.7% VS 42.2%)へ縮小。
1990年代前半にカジノで演じた日本人男性との仁義なき戦いで、勝ちにこだわる姿勢をみせつけたトランプ候補。14日に行ったノースカロライナ州の集会でも選挙戦が「不正操作されている(rigged)」と訴え、「全ては大いなる不正(big fix)だ。醜い嘘だ。大いなる不正だ」と主張していました。
仮に敗北を受け入れなければ、どうなるのか。一つ思い出して頂きたいのが、”ブライトバート”です。米大統領選まで90日を切ったというのに選対本部を刷新し、最高責任者を右派メディアの”ブライトバート”の最高経営責任者(CEO)であるスティーブ・バノン氏を招き入れましたよね。あの時、筆者は既に指摘させて頂きました。出口戦略の一つになるだろうと。フォックス・ニュースの創立者で前CEOのロバート・アイレス氏まで噛んでいるとあって、一大右派メディアを誕生させ政権に物申すシナリオは捨て難い。
ワシントン・ポスト紙は、他に第3の党を発足させる可能性を指摘しています。いずれにしても、クリントン政権と真っ向から勝負を挑み世論を二分させ、浮動票を取り込めば、一定の影響力を行使することは可能でしょう。政治への関心が低下中であれば、一定の信奉者を抱えるトランプ陣営の声が拡散しないとも限りません。米大統領選後は、エースが無理ならジョーカーで、といったところでしょうか。
(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。