米軍の電子戦で「ムスダン」は不能?

長谷川 良

韓国の聯合ニュースによると、 「韓国軍の合同参謀本部は20日、北朝鮮が同日午前7時ごろ、北西部の平安北道亀城市のバンヒョン飛行場付近で中距離弾道ミサイル『ムスダン』(射程3500キロ)とみられるミサイルを発射したが、失敗に終わったもようだと明らかにした」という。

北朝鮮は15日もムスダンを発射したが、失敗している。韓国軍によると、北は過去、計8度、ムスダンを発射し、成功は6月22日の時の1回だけだ。グアム米軍基地まで射程に収める弾道ミサイルの開発という平壌の宣伝文句が空しくなるほどの結果だ。北の弾道ミサイルが依然、技術的に問題を抱えていることを実証した、と受け止めるべきかもしれない。

当方は軍事専門家ではないから詳細なことは分からないが、以下、2点の疑問がある。①8回中1度しか成功しなかったということは、北の弾道ミサイルに致命的な欠陥があることを示唆しているが、それでは、なぜ6月の実験は成功したのか、②失敗しながらも北はなぜ短期間のインターバルでミサイル発射を繰り返すのかという点だ。

先ず、①について考えてみたい。6月22日のミサイル発射は一応成功したと言われる。約400キロ飛んで落下した。その成功例がなぜその後のミサイル発射に応用できなかったのか。技術的欠陥を克服して成功したとすれば、その成果はその後の実験でも当然応用されると考えるのが普通だ。

②の疑問点にも関連する。北のミサイル開発技術者たちは失敗を繰り返すことに首を傾げたはずだ。なぜならば、6月の段階で問題は解決済みだからだ。だから、北側は短期間のインターバルでミサイル発射をしたのだ。

興味深い点は、北は9月15日のミサイル発射では同国東部のミサイル発射地点(元山)ではなく、中国国境線に近い内陸のバンヒョン飛行場でミサイルを発射したという事実だ。なぜ、北はミサイル発射のロケーションを変えたのか。それはミサイル発射の前後に強力な電波が発射されていた事実をキャッチしたからではないか。米国が軍事衛星から強力な電磁波を発射し、北のミサイル発射の機能を不能にしたのではないか、という疑いだ。
そこで北側は急きょ、ミサイル発射位置を内陸に移動させた。しかし、結果は同じだった。ミサイルは発射直後、爆発したのだ。発射時点を移動したとしても宇宙から発射された電波を回避できなかったわけだ。

以上、推測だ。

米国は軍事衛星からの電波攻撃を公表しないだろう。もちろん、韓国側にも知らせない。なぜなら、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム、高高度防衛ミサイル(THAAD)を在韓米軍に配置しようとしている時だからだ。
参考までに、中国も電磁ビームを開発したという情報が流れている。だから、「ムスダン」爆発の主犯は中国人民軍ではないか、といった憶測も完全には排除できない。

弾道ミサイルを開発し、核搭載ミサイルで米本土を攻撃すると豪語した金正恩労働党委員長に対し、米国は電子戦を展開させ、軍事力の差を示し、金正恩氏の妄想を冷笑しているのではないか。北は今後、米軍の電子戦を回避するために潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発にさらに邁進するだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年10月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。