サウジアラビアは国際金融資本市場で初の国債発行を行い、175億ドルを調達した。ドル建てで5年債が55億ドル、10年債も55億ドル、30年債が65億ドルの3本建て。5年債が米国債に対してプラス135ベーシスポイント(約2.6%)、10年債がプラス165bp(約3.4%)、30年債が210bp(約4.6%)となる。
今回の起債は新興国で最大だったアルゼンチンの165億ドルを上回った。格付け会社のフィッチ・レーティングスの格付けは最高から4番目の「AA-」となっていたが、発行額の3倍以上の600億ドルを超える投資家の引き合いがあったとされる。大型起債ではあったがサウジアラビアというネームも好感された上に、比較的利回りも高いことで日本の投資家を含めて需要があったのではないかと推測される。
サウジアラビアがこれほど巨額の国債を発行しなければならないのは、当然ながら原油安が影響した。歳入の大半を原油に頼るサウジは原油安の影響から、2016年予算で3262億リヤル(約9兆円)の財政赤字に陥る見込みとされている。
今回の国債発行で調達した資金は財政赤字を穴埋めするだけでなく、ムハンマド副皇太子が主導する「脱石油」改革の柱として成長分野にも投じるとされる(日経新聞)。
サウジはすでに国内では国債を発行しており、財政赤字には銀行からの借り入れ、外貨準備の取り崩しでしのいでいたものの、国内金融機関の資金では限界があり、今回の海外での巨額の国債発行となったものとみられる。日欧米の長期金利が低位で推移していたことも手伝っての需要も意識されていたのではないかと思われる。
原油先物市場では19日に一時WTIが52ドル台をつけるなど、ここにきて上昇基調となっている。この背景には予想外のOPECの減産合意があったが、サウジアラビアが減産に同意したのは、少しでも原油価格を上昇させて今回の起債を成功させようとの意図もあったとされる(日経新聞)。
WTIの日足などをみると原油価格は底打ちし、下方トレンドが終了し反発局面となっている。このまま上昇トレンドを形成するのか。それともレンジ相場となるのか。OPECは決して一枚岩ではなく、イランとサウジの対立も解消されたわけではないことを考えれば、レンジ相場となる可能性が高いのではなかろうか。
国際政治のなかでオイルマネーをもとに大きな影響力を持っていた中東ではあるが、原油価格の下落がこの状況を大きく変えつつある。原油価格の下落は、世界的な物価の押し下げ要因ともなっている。今回のサウジによる国際市場での大型起債は、あらためて世界的な資金の流れの変化も意識されるものとなろう。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年10月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。