【映画評】バースデーカード

渡 まち子

バースデーカード1

紀子は幼い頃は泣き虫で引っ込み思案だったが、そんな彼女を母の芳恵はいつも温かく励ましてくれていた。だが紀子が10歳の時、芳恵は病魔におかされてしまう。死期が迫った母は、紀子たち姉弟が20歳になるまで毎年手紙を贈ると約束して、他界。翌年から毎年、愛情のこもった芳恵からのバースデーカードが届くようになる。そこには人生を輝かせるたくさんのヒントが込められていた。そして紀子が20歳になった時、最後の手紙を受け取るが、そこには、小学校のクイズ大会での失敗のあと紀子が母に投げかけた質問の答えが書かれていた。紀子は、10年前の“あの日”をやり直そうと決心する…。

バースデーカード2他界した母から娘に毎年届くバースデーカードを通して成長していくヒロインを描くヒューマンドラマ「バースデーカード」。宮崎あおいと橋本愛が母娘役で共演している。残された娘への愛情を手紙という形で残す母親と、それを受け止めて少女から大人へと成長していく娘を描く物語は、いわゆる“いい話”だ。約10年もの間、娘の成長を的確に予想しながらさまざまなアドバイスを送る手紙は、少々無理があるとはいえ、優しさにあふれている。だが先回りして書くしかなかったその手紙に、ほんのちょっぴり反抗的になる紀子が「お母さんに人生を決められているような気がする」と反発する気持ちもまた分かるのだ。

全体的にあまりにも小奇麗に作られているので、何だかおとぎ話のように感じてしまう作品だが、だからこそ、観客は、こんな家族愛に憧れてしまうはず。初めての恋とその後の運命、母の故郷への旅で知る若き日の母の姿。エピソードはどれも丁寧に描かれ、好感が持てるものばかりだ。中でも、幼い頃のクイズ大会での後悔を、大人になって出演したテレビ番組での勇気でリベンジする姿がいい。メールやSNSが当たり前の現代から見たら、なんとも古風な物語だが、母娘、そして家族の愛情はいつの時代も変わらずそこにある。

【60点】
(原題「バースデーカード」)
(日本/監督/橋本愛、ユースケ・サンタマリア、須賀健太、他)
(母娘愛度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年10月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。