決算審査で問うてみた「東京都は借金を返せるのか。」

上田 令子

 本日は、平成27年度各会計決算特別委員会第一分科会の初日で、会計管理局、選挙管理委員会事務局、議会局、財務局の局別審査を行いました。

 財務局=財政運営
 会計管理局=金庫番

 と、東京都の血税と都民の財産(土地や建物・現金)を所管する中枢機構の審査ですから張り切って臨みました。

 簡単に言えば、これから福祉の需要は多岐にわたり、量質ともに増えていくのに、その財源はどうしていくの?

 そもそも借金があるけれど、都民福祉を提供しながら、ちゃんと返せますか?
 まさか、子ども達にはツケを回さないですよね?

 ということにポイントを絞りました。 

税収以上に増える福祉費用?
 東京都の財源で頼りになるのが法人二税(法人事業税と法人都民税)。
 そこで過去15年の法人二税の推移を調べたところ、最も低かったのは平成23年度の1兆2,338億円。最も税収がよかったのが平成19年度の2兆6,162億円と約1兆3800億円ほども税収に差が出ていました。。法人二税は都税収入に占める割合は高いのですが、景気変動の影響を受けやすく、極めて不安定な形で増減を繰り返していて財務もお姐もそこを勘案しているのはかねてよりブログでも触れてきました。

 一方、福祉保健費は、どのぐらい支出しているのかといいますて、平成23年度の8,939億円から平成27年度の1兆553億円と右肩上がりで増加しております。平成19年度からこれまで、平均して、4.42%増加し続けております。仮に平成28年度の法人二税1兆8,125億円を一定とし、これから福祉費が4.42%増え続けるとした場合、12年後の2028年には

 法人二税≒福祉費

 という計算になります。
 つまり、東京都において約12年後には、都税収入の34.8%を占める法人二税で、福祉費用が賄えなくなってしまうのかもしれないということ。
 しかもその前の2025年。現在約800万人と言われる団塊の世代が75歳である後期高齢者を迎え、現在1,500万人程度の後期高齢者人口が、約2,200万人まで膨れ上がり、全人口の4人に1人は後期高齢者という超高齢化社会が到来するわけです。

 そこで、どのようなシミュレーションや対策などを想定しているのか、財務局に質しました。

財務局「第三者による推計を実施。この推計によれば、都の社会保障関係経費は、高齢者人口の増加などに伴い、毎年、平均約300億円、20年間で5,000億円以上増加することが見込まれている。
都は、事業評価などで効率性を高め、都債(お姐注:借金です!)や基金(お姐注:財源不明のプール金)を計画的かつ戦略的に(お姐注:ざっくりしすぎてる!)活用するなど、将来を見据えた財政運営を行っている。」

とお答えになりました。

 すわ!!どんな「計画的かつ戦略的」かしら…と耳をすましますと…

財務局「具体的には、平成27年度に「福祉先進都市実現基金」を創設するなど、「財源として活用可能な基金」の年度末残高を約1兆2,500億円、「2020年に向けた集中的・重点的な取組を図る基金」の年度末残高を約8,100億円確保するなど、将来への備えを講じている。」

 これって…どこからどうやってお金を引っ張ってきて「基金」を創設するのかしら。ない袖は振れない、そもそも手元にお金がなくなっていくのにどうやってプール金をこさえるのか謎すぎるのでありましたが、決算年度の報告への審査ですのでここは聞き置いて。もっと深刻な事態に斬り込んでいきます。

実は借金を返したくても返せない現実を見える化
これから、法人二税と福祉費用でプラマイゼロになるかもしれないというのは前述の通り。財務局は「引き続き、強固で弾力的な財政基盤を堅持し、将来にわたって持続可能な財政運営を行っていく。」と締めくくりましたが、実は平成26年度予算審査時のお姐blogで指摘してきたように東京都には6兆円という一般会計級の借金があるわけです。これまで色々と「世代間の不公平をなくすため」との説明を財務からは頂いておりましたが、チームお姐にて、公式に決算委で資料要求したデータをグラフ化してみたら恐ろしいことが判明したのです。

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 ご覧のとおり、バブル崩壊の平成3年あたりから都債発行額が元金償還額を上回り(=借金額が借金返済額よりも上回った)、都債残高は平成3年の1兆6941億円から平成13年の7兆6384億円と10年間で5兆9,443億円もの多額の借金を増やすことになったわけです。国でも同様に、バブル崩壊後に国債残高(国の借金)が増えて、今日に一千兆円ともなりニッチもサッチいかなくなっていることは賢明なる皆様はご承知のとおりでございます。

 せめて、東京都は今のところキャッシュフローは黒字なので、今のうち節約をする行財政改革を徹底し、やりようがあるのではないかとお姐は考えていたのですが、28年度予算は14年ぶりに一般会計予算が7兆円を超える始末。

 東京都も国と同じように景気対策(公共事業)に打って出たことが都債残高(棒グラフ)の上昇+現状維持に見て取れます。当選以来、「いつ減らすのか?どうなっているのか?」と指摘するために「世代間の不公平…(以下略)及び元金償還をしている」と答弁するも、現状として全く減っていないのが、この、ギリシャの神殿のような棒グラフが語る通りでございます。
 頂点に達した平成13年の7兆円以降、チビチビと返済しているところは読み取れますが、平成20年9月に起こったリーマン・ショックの翌年である平成21年、23年、24年はまたもや借金が増え、これまでの努力空しく4年間で3,151億円も増加することになったのです。
 
 財務局答弁のとおり「財政再建達成後も施策の見直し努力」をし、「リーマンショックの影響で、都税収入が1年間で約1兆円もの減収に直面した際にも、安定的に必要な行政サービスを提供」できたことは大いに評価しておりますが、状況は年々深刻になってきているわけです。「投資的経費の削減や都債の発行抑制を行ってきた」と言われても、豊洲新市場やオリパラと莫大に膨らんだ事業費を見るととても納得もできませんし、都民の皆様に私も説明ができないから、何度も疑義を質しておるのです。

 財務局答弁十八番の「引き続き、強固で弾力的な財政基盤を堅持していく。」ことができない状況がすぐそこにあるのです。

新知事のもと改革を急げ。
 結局お姐の「借金は返さないのか」の問いに「借金は返せます!」と明言しなかった財務局でしたが、小池知事は、私の「決算審査にどう臨むか」との質問に対し「決算は、予算に計上された施策や事業の執行結果を計数的に明らかにして、行政目的が効果的、効率的に達成されたかどうかの判断材料を都民に提供するものであり、決算審査を通じて、施策や事業の成果、そして課題を具体的に検証し、今後の予算編成に生かすなど、PDCAサイクルを踏まえた取り組みにより、都民ファーストの都政の実現を目指す。」
と答弁しました。
 世界金融のこのところの不安定さを鑑みても、バブル崩壊級、リーマン・ショック級の経済ショックが発生した経験を踏まえても、さらには、先に述べた2025問題、「法人二税≒福祉費用」を鑑みて、まさに、借金返済のPDCAサイクルをふまえ、可及的速やかに都財政構造改革を断行しなければ、未来の子どもたちに、借金という大きな負の財産を相続させることになるのです。

☆お姐、常に政局より政策!常に地域住民と議会活動最優先!でスキップして獣道をゆけ☆

上田令子 プロフィール

東京都議会議員(江戸川区選出)、地域政党「自由を守る会」代表、地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)副代表
白百合女子大学を卒業後、ナショナルライフ保険(現ING生命)入社後、以降数社を経て、起業も。2007年統一地方選挙にて江戸川区議会議員初当選。2期目江戸川区議会史上最高記録、2011年統一地方選挙東京都の候補全員の中で最多得票の1万2千票のトップ当選。2013年東京都議会議員選挙初当選。2014年11月地域政党「自由を守る会」を設立し、代表に就任。2015年3月地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)を設立し、副代表に就任。

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