レックス・ティラーソン(エクソンCEO)が、米シェールオイルがあるから供給不足が起こる心配はない、とロンドンで発言したのは、この伏線だったのか!?
また、SECが埋蔵量と資産の同社評価方法について調査を開始したことへの回答でもあるのだろうか?
弊ブログの読者のみなさんはご記憶だと思うが、9月21日付弊ブログ「米SEC、エクソンを調査=資産評価方法を問題視か=WSJ」でお伝えしたように、この2年間の原油価格大幅下落によりライバルである大手国際石油会社他社が軒並み大幅な減損処理を強いられている中、エクソンだけが涼しい顔をしており、評価方法に問題があるのではないかとニューヨーク州の検事総長が動き出し、呼応してSECが調査を開始していた。
また、サウジのファーリハ・エネルギー相が「価格が大幅に下落しているこの2年間、石油業界の資本投資が大幅に減少しており、このままでは近い将来供給不足が発生し価格高騰のリスクがある」と、OPECの減産方針の理由を説明した同じコンフェランスの場で、レックスが「膨大な在庫に加え、シェールオイルが余剰生産能力として機能するので、向こう3、4、5年間は供給不足が生ずる恐れはない」と発言していたことは、10月20日付弊ブログ「シェールは十分なスイングプロデューサーか?」で紹介したとおりだ。
FTのEd Crookが “ExxonMobil on course to cut reported proven oil reserves by 19%”と題して東京時間10月29日00:00ごろに報じている記事は、これらの動きに呼応するエクソンの対応を伝えているようだ。記事の要点は次のとおりとなっている。
・エクソンは3Qの決算報告の中で、年末まで現在の低油価が続くなら、2015年末に248億バレル(石油換算)だった保有確認埋蔵量を46億バレル削減する必要がある、と発表した。
・同時に、減損処理が必要かどうか、年末における主要な長期資産 (major long-lived assets”) の評価を行う、と約束した。
・トタールやシェブロンが大幅減損となり、スタットオイルやENIが損失を計上している2016年第3四半期の最終損益が、38%減の26.5億ドルだったと発表している中で、保有埋蔵量減少を警告している。
・今回の発表は、価格が大幅に下落しているのに減損処理をしていないエクソン決算処理方法に疑念を持ちNY州検事総長が調査を開始した、とのニュースに起因して表面化した、SECがエクソンの保有埋蔵量と資産評価について調査を開始した、という9月の報道に続くものである。
・さらに、今回の埋蔵量見直しは現在の操業及び生産に影響を与えることはなく、将来油価回復、更なるコスト削減、あるいはオペレーションの効率化などが生じた場合には、もう一度保有埋蔵量としてカウントすることになるだろう、としている。
・なお、46億バレルのうち36億バレルはカナダのオイルサンド事業に関するもので、残りの10億バレルは北米の各種プロジェクトのものである。
・今回の見直しは、低油価が続く業界環境と予算作成作業の一環として行うものである。
・エクソンは、公表していない社内の想定価格予測に基づいて資産評価を行っているが、これは業界他社あるいは各国政府の専門家が発表している長期価格予測と一般的に合致している、としている。
・また、10年以上の長期資産の評価に関しては、さらに重要な経営判断が織り込まれている。
さてこうなると、SECおよびNY州検事総長の調査がどう進むのか、調査結果が公表されるのか、という点が非常に興味深いものになる。はてさて、どうなるのだろうか?
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年10月29日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。