みんな、二階さんに振り回されている

機を見るに敏、実に強かだな、と思うのが二階幹事長である。
そろそろその舌鋒に陰りが見えてもおかしくないのだが、全体の所作が少し緩慢になったかなと思う程度で相変らずその強かさぶりを周囲に見せつけている。

ご自分はアドバルーンを上げる程度で済ませているのだが、意志は強固で一旦決めた方針は簡単に変えないタイプのようである。

周辺の人たちが、あれこれ手を回しあるいは気を回して、結局は二階さんが言っている方向、希望している方向に自民党を持って行っている。

よくやっているじゃないか、というところである。
谷垣さんだったら多分自民党内で異論が噴出し、結局結論を先送りすることになっただろうが、二階さんが言い出すと、皆さんお互いに牽制しあい、面と向かって正論ないし異論を言い難い雰囲気を作ってしまう。

二階さんは狸だなと思うが、とにかく場の雰囲気を作ったり、流れを作ることが巧みな人である。
自分が矢面には立たないようにしながら、上手に事を仕上げている。

こういう時に仕事をするのは、自民党の中で調整役を一手に引き受けている高村副総裁である。

二階さんと高村副総裁がタッグを組んで仕上げたのが、件の総裁任期延長問題である。
総裁候補者を抱えている派閥にとっては譲れないような重大な問題だったはずだが、誰一人として真正面から異論を言い難いような状況を作って、如何にも満場一致のような感じで総裁任期の延長が決定された。

その武器に使われたのかしらと思うのが、衆議院の解散風である。

通常国会の冒頭解散説が流れ、各派閥を通じて、選挙準備を加速せよ、などという明示若しくは暗黙の指令が再三にわたって下されてくると、普通の人ではまず執行部に対して面と向かって反抗なり抵抗の意思表示は出来なくなる。

しかし、ここに来て、二階さんが解散風を吹かせるのを止めたようである。

むしろ、解散は遠のいた、ぐらいのメッセージを出し始めている。

火を点けて煽ってみたり、水を掛けてみたり。
ああ、皆さん二階さんに振り回されているな。

二階さんに翻弄されている国会議員の皆さんが気の毒に見えるくらいである。

二階さんは、実に強かである。
老獪だと言っていいだろう。

もっとも、その二階さんでも何ともしようがない人が一人いる。
この人は二階さん以上に強かで、かつしなやかである。

二階さんの仕掛けを、寸前で交わすようなところがある。

まだどういう決着になるのか分からないが、とにかくこの人はそう簡単には二階さんの手には乗らない、ということが明らかになった。

さすがの二階さんでも手に余るようだ。

傍で見ていて、この人と二階さんの遣り取りは実に面白い。
さて、この人は誰か。

言わずもがな、小池さんである。
7人の侍の懐柔なり分断を策していたのではないかと思われていた二階さんの仕掛けを、小池さんは上手に外してしまった。

いやあ、よくやるものだ。
これで、7人の侍が二階さんに篭絡される虞もなくなった。

こういう強かな政治家の方々に翻弄されておられる方々はさぞかし大変だろうが、今は、ただ黙って見ているのがいいだろう。

なるようになるものである。
ジタバタする必要は些かもない。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年10月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。