伊地質学者「地震の続発」を予測

長谷川 良

イタリアでここのところマグニチュード(M)5からM6の地震が頻繁に起きている。30日には同国中部ノルチェ近郊で1980年以来、最大の地震、M6・6の地震が発生した。倒壊した家屋の傍で困惑したイタリア人の姿がニュースで放映されていた。彼らは余震を恐れ、眠れない夜を過ごしている。

同国中部ペルージャ県ノルチャ付近で8月23日、M6・2の地震が発生し、 アマトリーチェなどでは多数の犠牲者が出たばかりだ(死者総数298人)。10月30日の地震では多数の建物が倒壊したが、幸い、これまでのところ死者は出ていない。ちなみに、「なぜ、8月の中部地震で多くの犠牲者が出て、今回は死者が出なかったのか」といった声も聞かれる。

マッテオ・レンツィ首相は30日、「緊急に復旧作業に取り掛かる。家屋を失った国民は新しい家を建設する」と約束していた。それを聞いていた被災地の住民が「首相は約束するが、いつ新しい家屋を造ってくれるのか、その財源はどこから来るかなど何も言わない」と述べ、首相の支援発言に懐疑的な反応を示していた。

被災地では他地域に避難する住民が増えている。なぜならば、地質学者は、中部地域で今後も地震が続発するドミノ効果を予測しているからだ。
例えば、1783年のカラブリア大地震では2カ月間で5回の大地震が続けて起きている。同国ウンブリア州ペルージャ県のアッシジでも1997年9月、3週間で3回の連続地震が発生した。
地質学者は、「今回の中部地震はこれまでの地震を上回る規模だ」と警告を発している。イタリアで地震が多発する理由としては、ユーラシアプレートとアフリカ・プレートが衝突する地域だからといわれている。

8月の地震と今回のイタリア中部地震で、オーストリアでもチロル州やケルンテン州で揺れが報告されている。国民の地震に関する関心は高まっている。オーストリアでは軽震はあるが、M4程度の地震は久しく体験したことがない。音楽の都、ウィーンに住む当方は過去36年間、1度「あれ、少し揺れている」と感じたことがあっただけだ。地震大国で生きている日本人には考えられないことだろう。

当方はイタリアに多くの知人、友人がいるので、地震の度に被害状況を聞くが、彼らは自身が直接被害を受けていなくても、地震の被害に話が及ぶと、涙ぐみながら説明する。

イタリア人はいい意味で感情の振幅が大きい。嬉しい時は文字通り大喜びし、悲しい時は直ぐに涙する。イタリア語にはドルチェ・ヴィータ(Dolce Vita)という言葉がある。直訳すれば「甘美な人生」といった意味だ。束縛されることなく、人生を楽しむイタリア人気質を表した言葉といわれる。

イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領は、「困難な状況下で国民は結束しなければならない」と述べている。イタリア国民はその天性の明るさを失うことなく、復旧に果敢に取り組んでいってほしい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年11月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。