「都会の女はみんなキレイだ。でも時々、みっともないんだ」。東急電鉄の車内のマナー向上を目的とした広告がネット上で議論を巻き起こしている。「女性蔑視だ」「男性の酔っ払いのほうがみっともない」などの批判の声があがった。まず、これはマナー向上の話であって女性蔑視ではない、さらに男性の酔っ払いと比較すること自体に意味が無い。
この議論に関しては非常に分かりやすい回答があるのでそれを紹介したい。『考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方』の著者であり、浄土真宗本願寺派僧侶、保護司、日本空手道「昇空館」館長も務める、向谷匡史(以下、向谷)氏の見解である。
■他人に迷惑がかかることを諭す
――まず、向谷は次のように指摘する。「昼間、空いている電車の中で、座席に座っておにぎりやパンを食べている若い人を見かけます。いつのころからそんな姿を目にするようになったのか定かではありませんが、コンビニの発展と無関係ではないような気がしています」。確かにそのような光景を目にする機会が増えたことは間違いない。
最近は駅中やホームにもコンビニが増えている。駅のコンビニで食物を買って電車に乗り込んでいるという流れなのかも知れない。向谷は「私は子どもにも孫にも、電車内での飲食は絶対にさせない」と述べている。以前、次のようなことがあったそうだ。
「孫娘が低学年のころですが、電車に乗って遊園地に遊びに行く途中、リュックからお菓子を出そうとしたので『電車の中で食べたらだめだよ』とピシャリと言いました。孫娘は不服そうな顔で『どうして?』と問いかけてきました。」(向谷)
――この時、離れた席では高校生が菓子パンを食べながら、ワイワイ話をしていたそうだ。その姿に目をやりながら、「どうして私は食べてはいけないの?」という疑問を抱くことは当然だろう。そして、次のように諭したそうだ。
「○○ちゃんだけでなく、電車で、ものを食べるのはみっともないことなんだ。あそこで食べてる高校生は、そのことを知らないんだね。電車はみんなが一緒に乗っているでしょう。そのなかで、パンやおにぎりや、お菓子を食べたりすると、匂いが嫌いな人がいるかもしれないよね。」(向谷)
「クチャクチャと噛む音が嫌いな人だっている。ジュースを飲んでいると、電車が揺れたときにこぼすことだってあるでしょう?だから、電車の中では食べたり飲んだりしてはいけないんだよ。」(同)
■公私を理解することの重要性
――注意をする時には諭すことが必要である。これは、子供に限らず大人の世界であっても同じだろう。諭すことができなければ相手が腹落ちをすることは難しい。先ほどのケースでは、次のように念押しをして諭したそうだ。
「ものを食べるのは、おうちかお店。裸になるのはお風呂。ちゃんと、場所が決まっているんだ。お風呂で食事したらおかしいだろう。場所をきちんと守れないのは、恥ずかしいことだね。」(向谷)
――相手が、高学年になると、公私の話をするそうだ。公に私事を持ち込むことも、私事に公を持ち込むこともやってはいけないと。公私の区別がつかないことを”公私混同”という。電車の中は公共の場であり、ものを食べると公において私事をやっていることになる。これは恥ずべきことである。
「ついでに言えば、若い女性が電車の中で睨めっこしながら、熱心に化粧をする姿をよく見かけます。これがみっともないのは、化粧という”舞台裏”を見せることに恥じらいがないことと公の場において私事をしているからです。」(向谷)
――なぜ駅のトイレを「化粧室」と称するのか?そのことを考えてもらいたい。それぞれの場所には、守らなければならないことがある。公私に関する問題は非常に重要なので、そのことを理解しなければいけない。
本書は、子供向け教育に書き上げられたものだが、ケースにリアリティがあることから大人にもお勧めできる。上司のコネタとしても役立ちそうだ。公私を理解することで物事の正しい道筋を見つけられるかもしれない。
尾藤克之
コラムニスト
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