昨年11月末に締結されたパリ協定が無事条件を充足し発効して、初めての会合となるCOP22、マラケッシュ会議開催直前の11月4日に、世界の大手石油会社10社が新たな取組みを発表した。気候変動対策として、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage 二酸化炭素回収貯蔵)技術の革新に向こう10年間で10億ドルを費やすと発表したのだ。
FTが “Leading oil groups focus climate change plan on carbon storage” (around 22:00 on Nov 4, 2016 Tokyo time) と題して報じている。サブタイトルは “Saudi Aramco and BP among those looking at technology to capture CO2 emission” となっている。
いわゆる「需要ピーク論」との兼ね合いで重要な意味を持つ動きなので、記事の要点を順不同で次のとおり紹介しておこう。
・参加している10社とは、Saudi Aramco、Shell、BP、Total、Statoil(那)、CNPC(中)、ENI(伊)、Pemex(墨)、Reliance(印)、Repsol(西)で、世界全体の石油生産量の約1割を占めている。
・米国のExxonMobilとChevronは参加していない。
・BPのBob Dudleyは、「パリ協定は歓迎する」、当選したら破棄するといっている「ドナルド・トランプが当選しても我々の計画は変更されない」と語った。
・シェルのBen van Beudenは「再生可能エネルギーだけでは世界のエネルギー需要をすべて賄うことは出来ない」。
・TotalのPatrik Pouyanceは「全てのことをやることはできない。石油ガス会社として最も有効な方法を採用するのだ」。
・Saudi AramcoのAmin Nasserは「これから何十年も石油はエネルギーミックスの中に位置するだろう」。
・批判的なシンクタンクのJonathan Marshallは、1社あたり1年間に1000万ドルでしかないので「大海への一滴」でしかない、「ビル・ゲイツを含む慈善家たちが倍以上の寄与をしえている」とコメントしている。
・Shellは2016年単年で250~260億ドルの資本投資を行っている。
・クリーンエネルギー関連で世界全体では、昨年3480億ドルが費やされている。
・IEAによると、クリーンエネルギー関連投資は今から2050年までに4兆ドルに昇る見込みだが、もしCCS技術革新がなかったらもっと多額の投資が必要になるだろう、と言っている。
ううむ。
日本はパリ協定批准そのものも遅れたし、10社の中にも入っていない。
やはり国民のエネルギーリテラシーを高めるところから始めなければならないのだろうな。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月5日のブログより転載させていただきました(アイキャッチ画像はBP Globalより引用)。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。