米国版のBREXITが全世界を直撃、まさにブラック・スワンが降り立ちました。
NY時間午前2時43分、遂にトランプ候補の選挙人の数が274人と勝利に必要な270人を突破しました。ペンシルベニア州でトランプ候補が勝利したとの推計値が出た時点でクリントン陣営のポデスタ選対本部長は投票をカウント中だという事情から今夜の”敗北宣言”を控えると発言していましたが、誰がこのような展開になると予想したでしょうか。第45代、米大統領はドナルド・J・トランプ氏が就任します。
ペンス新副大統領は、6aveのヒルトン・ホテルに設営した選挙本部の舞台にて「歴史的な夜だ!」と感極まった様子を隠そうともしません。そのペンス氏に紹介され、壇上に上がったトランプ氏の第一声は「クリントン候補から祝辞の電話があった」。ポデスタ選対部長のコメントから一転し、敗北を認めた格好です。勝利宣言ではクリントン候補を称え「国を団結(unite)させる」と明言したほか、自身を支持しなかった人々に対し「数は少なかったけどね(a few)」とジョークを交えつつ、「あなた方の助言と支援(guidance and help)を得て」米国を率いていくとも言及しました。今回の選挙は「キャンペーンではなくムーブメントだ」とも語り、米国第一で世界と接する方針を確約しています。2期目への意欲も示すエネルギーもちらつかせました。
ランニング・メイトのペンス知事のほか家族、プリーバスRNC委員長、ジュリアーニ元NY市長をそれぞれに称賛とねぎらいの言葉も忘れません。
結果は、274対218。選挙戦を含め、前代未聞の戦いとなりました。
まさかのトランプ新大統領の誕生をにらみ、ダウ先物は一時800pに及ぶ急落劇をみせ、S&P500とナスダックはNY時間午前12時前に5%以上も落ち込み、”リミット・ダウン”が作動、一段の下落を回避させました。Emini-S&P500の出来高は、1日当たり平均の17倍に及んだといいます。
ただし、クリントン候補が電話で敗北を受け入れたためダウ先物は300p以下まで下げ幅を縮小してきました。元CNBCの看板司会者で現在はフォックス・ビジネス・ニュースのアンカーを務めるマリア・バリチェロモ氏(2006年にバーナンキFRB議長からあと1回の利上げ発言を引き出した人物)やコメンテーターは、法人税減税や規制撤廃など「企業寄りの政策を推進するため落ちた所は絶好の買い場」と指摘していましたが、9日の午前9時半の寄り付きで暴落を回避できるでしょうか。
メキシコ・ペソは1ドル=20ペソを超え、過去最安値を更新。メキシコの中央銀行は、マーケットへの対応策を発表するため会見を開くとの噂も流れています。
金融市場の混乱をよそに、今後はトランプ候補が政策として勝利宣言さ最初に言及したインフラ投資をはじめ減税策、医療保険制度改革(オバマケア)の廃止、クリーン・パワー・プラン(CPP)を含む米大統領令の撤廃、環太平洋パートナーシップ(TPP)の脱退、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉などの動向に注目が集まります。ポール・ライアン米下院議長など、トランプ候補に非協力的だった共和党有力議員との関係を修復するのか否かも、気になるところ。米国は、未知なる領域への第一歩を踏み出し始めました。
(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。