行政事業レビュー秋の公開プロセスが進行している。これは、国の事業の意義や効果を総点検し、無駄を撲滅し、国民に信頼される質の高い行政を目指す活動である。
広く国民の関心を集めるために、この秋には東京・霞が関だけでなく、大阪にも会場が設定され、大阪では11月5日に教育(子どもの学習指導)、PFI(民間資金等活用事業)、住宅セーフティネットが議論された。その模様は大阪のローカルニュースでも紹介された。
東京会場では11月10日から12日まで実施され、僕は二日目午後の「社会保障(介護納付金)」と三日目午後の「成長戦略の推進②(ベンチャー支援)」を担当した。
社会の高齢化とともに社会保障給付費は増加の一途をたどっている。このうち介護保険分は、国・地方公共団体、65歳以上の国民(第1号被保険者)、40から64歳の国民(第2号被保険者)がそれぞれ一部を負担して賄っている。第2号被保険者分は健康保険組合が代行徴収しているのだが、協会けんぽ等については本来徴収すべき額の16.4%が国から補助されている。
最初に議論されたのは、介護納付金の負担方法である。分担総額を第2号被保険者が人数割りにする現制度から、収入に報じて負担する総報酬割への移行が厚生労働省の審議会で検討されている。これが実現すると、加入者の所得が少ないからと実施されてきた協会けんぽ等向けの16.4%の補助金も廃止できる。国費の無駄を削減する視点で、これを支持する意見が出た。
健康増進運動に対する熱意が協会けんぽによって異なっている。しかし、不健康な生活から医療の世話になり、後々、介護サービスを受けるようになるという統計的な傾向はすでに研究されている。健康増進運動の取り組み実績で補助金の比率を変えるインセンティブ制度を盛り込むべきと、僕は発言した。
社会保障制度を持続させるためには、医療と介護分野のデータ分析・活用が重要である。医療分野でレセプト情報・特定健診等データベース(NDB)が構築され、それとは別に、介護保険総合データベースも2013年度から運用されている。さらに、これらからデータを抽出し閲覧する地域包括ケア「見える化」システムを、これから構築するという。健康・医療・介護は相互に深く関係しているのに、医療と介護で別々にシステムを作り、データ連携はこれから検討するというわけだ。
健康・医療・介護にかかわる行政全体を効率化・効果的にするというグランドデザインが欠如しているために、バラバラにシステムが作られる状況になっている。きちんとしたグランドデザインを描くべきことと、個々人の健康・医療・介護の年次的経緯が蓄積されるシステム(コホート)への転換を図るべきと、僕は発言した。
レビュープロセスには、山本幸三担当大臣も同席した。大臣も、健康・医療・介護データの相互連携の重要性について、その場で発言された。その方向で行政改革が進むように、強く期待する。