警察庁の指導が論争呼ぶ
夜間、車で走る時、ヘッドライト(前照灯)の角度を上げたり、下げたりしますね。上げるのはハイビームで、100m先まで見え、下げるのはロービームで、40mまで見えます。警察庁は事故防止のため、視野を広げるハイビームの使用を奨励することになりました。あくまでも「状況」次第ではロービームなのに、「どんどんハイビームを使え」との受け止め方も予想され、「危険も招く」と、論争が起きています。
誤解を生む説明不足の新聞記事もあります。マイカー運転を欠かさない私の知人が、この問題を扱った新聞記事をメールで送ってきてくれました。「11月19日夕刊の朝日新聞に舌足らずの記事が載っている」と、怒っているのです。「見出しに、ハイビーム使用を、警察庁が教則を改正、とある。記事全体の印象は、ハイビームの常時使用の推奨と受け取られかねない書き方だ。誤解を招きかねない」。
道路交通法に基づき作成される教則は、教習、免許更新時の講習で指導を受ける際の教科書です。来年3月から「交通量の多い市街地などを除き、事故防止のためハイビームにするよう明記する」(朝日)というのです。夜間、郊外で起きた死亡事故を調べると、ロービームだった場合が9割を超えたので、危険防止には夜間視野を広げる必要があるということなのだそうです。
ハイビームは我慢がならない
「対向車がこない、前走車がいない時には、ハイビームにしなさい、というのが正しい解釈だ。教則の変更は、対向車も前走車もないのに、ロービームで走る車が多く、事故原因になっていることに注意を促したものだ」と、指摘します。知人は現役時代に大手電機メーカーの役員をやり、電気工学の博士号をお持ちですから、解釈は厳格です。「街中で対向車や前車がある時や、信号待ちの時にハイビームを点灯すると、道交法違反(5万円以下の罰金)になる」。つまり「交通量の多い市街地などを除きハイビーム」(朝日)は間違いだと、批判します。
ともかく警察の指導とあれば、今後、夜間のハイビーム使用は増えるに違いありません。知人は「高速道路でも夜間、後ろからくる車(つまり前走車がいる車)のハイビームでバックミラーが光り、目がくらみ、我慢がならない」といいます。目がくらんで、前方が見にくくなり、あわや事故、ひやりとした経験をお持ちの方は多いでしょう。
ハイビーム使用ついては、私の知人に限らず、注意を喚起する人が少なくありません。「ハイビームははるか遠くからでもまぶしい。自転車に乗っていると、とんでもなくまぶしい」、「運転者の視野は広がっても、歩行者は目がくらむ」、「ヘッドライトの性能がよくなり、夜間でもサングラスがいるほどだ」、などなど。
将来は次世代型ヘッドライト
「夜間は原則としてハイビーム」という誤解が広がらないよう、警察は努力してくださいよ。運転する側のことばかり考えていてはいけません。
JAF(日本自動車連盟)のホームページを見ますと、「道路運送車両法では、ロービームはすれ違い用前照灯といい、対向車や前走車がいる時に使用する。ハイビームは走行用前照灯と定義しているだけで、ロービームのように、状況を限定した使用規定はない」とあります。つまり「通常の走行を想定したライト」だから「ハイビームの使用が原則」になっていると読める法律で、ここからも誤解が生じるのですね。
まあ、将来は「次世代ヘッドライト」の登場、普及が期待されます。センサーが状況に応じて、ヘッドライトの角度、明るさを自動的に調整する。前走車に接近したり、対向車がくると、瞬時にロービームに切り替わる。障害物があると、事前に見つけて照射する。「オートライト」との呼称もあるようで、新車からの義務付けも検討されています。その場合でも、自転車や歩行者側ことを考えて、開発してくださいね。それと基本は、夜間は速度を落として走行することの徹底です。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年11月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。