なぜ、朝日新聞はウソをついてまでトランプを叩くのか

渡瀬 裕哉
朝日新聞

<朝日新聞社ロゴマークから引用>

朝日系有識者の「小学生の作文」並みのトランプ叩き

トランプ氏を低所得者層が支持するカラクリ(2016年11月21日・国末憲人朝日新聞GLOBE編集長)という文章を拝読させて頂きました。筆者の感想としては事実誤認・偏見・教養不足に基づく極めて劣悪な論稿だと思います。

「トランプ氏は、金持ちなのになぜ庶民から人気を得るのだろうか。エリートに対する羨望の眼差しと権威はなぜ失墜してしまったのか。もしかすると、トランプ氏はアメリカ人が一度失ってしまった「安心感」を持っているのかもしれない。」という解説文からスタートする時点で正直クラクラしてきます。

トランプ氏をポピュリスト、大衆をポピュリストに従う無知な存在として描く「インテリンチ」の典型にもはや失笑するしかありません。上記の論稿には「勘違いしたエリート」が裸の王様であることを指摘された逆切れのような文章が並んでいます。

大統領選の「インテリンチ」の空気に飲まれていた人へ

トランプ氏を支持した人々は中・高所得層、しかも必ずしも低学歴に限らない

そもそも国末氏の認識は根本的に誤っています。トランプ氏に投票した層は中所得層よりも上に属する人々が大半です。トランプ氏は従来までの共和党支持層からの支持を獲得することに最終的に成功しています。

トランプ支持者は「白人ブルーカラー不満層」という大嘘(2016年11月1日)

したがって、そもそもトランプ勝利を低所得者層によるポピュリズムの産物と位置付けるような言説はウソです。むしろ、年収3万ドル以下の低所得者層はヒラリー支持者が圧倒的に多く、国末氏が馬鹿にする低所得者はヒラリーに投票した人々だと言えます。同氏がご自身の所得と比べて、5~7.5万ドル(500万円~750万円)の共和党の中核的な支持層も低所得というなら話は違うかもしれませんが。。。

また、上記の世論調査や選挙後の出口調査発表を見ても明らかなように、トランプ氏は高学歴者・高所得者層からも一定の支持を受けています。トランプ氏の経済政策はヒラリーよりもビジネスフレンドリーな政策が盛り込まれており、経済政策を重視する「政策が理解できる人」もトランプ氏に投票しています。その中には学歴だけで単純に比較しても国末氏よりも高学歴者も多数含まれていることでしょう。

さらに、今回の大統領選挙については亡くなったスカリア最高裁判事の後任を事実上選ぶ意味合いもあり、学歴・所得に関わらず、保守的な信条を持った人々もトランプ氏に投票したものと思います。そのような個人の思想信条を軽視し、ポピュリズムとトランプ氏への支持を切り捨てる行為は自由と民主主義の敵だとすら言えます。

米国においてヒラリーに偏向したCNNなどの大手メディアの報道が選挙結果によって否定された理由は、欧米版の「朝日的なモノ」が「自由と民主主義を大切に思う」多くの人々に敵として認知された結果だと思われます。

そもそも共和党をマルクス主義に基づいて分析する思想的な浅薄さを恥じよ

さらに、国末氏の論稿には、思想的な浅薄さ、米国政治思想についての無理解も表れています。

共和党は米国の保守主義に立脚した政党であり、彼らの依って立つ思想は「マルクス主義」とは対極を成すものです。したがって、共和党または共和党指名候補者を所得階層に基づくイデオロギー的な分析によって説明すること自体が無理がある行為ではないかと考えます。

自らの置かれている経済環境への不満から格差の是正などを訴える人々は「共和党ではなく民主党」に投票します。ラスト・ベルトのブルーカラーが経済的な不満によってトランプに投票した、と言われる説は米国の底流に流れる政治思想を軽視するものです。

多くのメディアや大学研究者は唯物的な分析手法に染まっているため、それらと全く異質な存在である共和党及び同党支持者への適切な説明ができていないように見受けられます。

実際に共和党の保守派の人々と話せば直ぐに理解できることですが、彼らは自身の所得階層とは関係がなく、「政府からの自由を尊ぶ」傾向があります。

それらの人々は減税・規制廃止などを重視して政府からの干渉を嫌うだけでなく、アファーマティブアクションなどの政府によって人為的に作られた区別にも反対します。また、不法移民、癒着・腐敗、外国による為替操作などの不公正な行為に対しても敏感な反応を示す傾向があります。

仮に自らの苦境を凌ぐだけの意見表明であれば民主党に投票して政府の保護下に入るべきでしょう。わざわざ共和党指名候補者への支持・投票を行う理由はありません。

米国民は結果の平等ではなく「公正さ」を求める選択肢として共和党を支持するのです。共和党は米国の保守主義(≒自由主義)に立脚し、人間の自主独立の精神を尊ぶ人々の政党です。

このような考え方は米国内に所得に関係なく広く浸透しているものであり、同党を人々が支持する理由を経済環境だけで語ることはナンセンスです。

国末氏の論稿は上記のような米国政治の基礎的な要素を無視した上に低所得者への偏見に基づく論外なものだと言えるでしょう。自らの理解を超えた投票行動を行う米国の有権者に対し、彼らとロクに会話も観察もせずに人々を見下すだけのエリートには一生分からない話かもしれませんが・・・。

朝日新聞は国民を卑下する「選民思想」に立脚したメディアに過ぎない

朝日新聞の思想の本質は「エリートである自分たちが無知で哀れな大衆を保護する」というものです。

そのため、今回の米国大統領選挙で「本来は朝日的なモノを支持するべき層=無知で哀れな低所得者」が自分達エリートを否定するという屈辱に耐えられないのでしょう。ヒラリーを支持したエスタブリッシュメントに自らを重ね合わせて言葉を綴る姿は醜悪だとすら言えます。

大新聞のオフィスや大学の研究室で暮らす人々から「無知で可哀想な存在」として描かれて、実際には彼らの商売のネタとして生きていくことに人々は飽き飽きとしています。人間は彼らのモルモットではなく自由意志を持った存在です。

今回の大統領選挙で自由と民主主義の敵へと変質した現代のメディアがSNSを中心とした大衆の声によって打倒されたことは慶事です。

今後日本でも「朝日的なモノ」=選民思想を倒す、自立した国民の声が湧き起こることに期待しています。

トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ (ちくま文庫)
ドナルド・J. トランプ
筑摩書房
2008-02-06

 

本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などは[email protected]までお願いします。


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