米投資銀行のゴールドマン・サックス(GS)が、どのような思惑で、どのようなタイミングで見通しを発表しているのか、筆者は不勉強にして知らないが、今回は絶妙のタイミングで出したものだと感心している。
FTが “Goldman turns bullish on commodities” と題して今朝(2016年11月22日午前1時ごろ、東京時間)報じているのがそれだ。
GSによる鉄鉱石の相場動向について触れている箇所もあるがそれは省略し、ここでは、例により筆者の興味関心にもとづく要点を次のとおり紹介しておこう。
・世界経済がインフレの昂進と高成長に移ろうとしている中、典型的には弱気派のGSが、来年は商品相場に重点を転じる。
・商品相場が「循環的強気」となっていることに鑑みGSは、OPECによる生産削減の影と錫と天然ガスの供給量減少が世界の商品価格を支えることになろう、と言う。
・トランプ当選により急激なドル高となっているがGSは、商品相場の上昇見通しは米ドル高でも維持できるだろうとしている。
・「商品相場は、最近の購買担当者指数(Purchasing Manager’s Indices)が再び上昇していることに証されているように、中期循環の中断を経て、循環的強気サイクルに入っている」とGSのJeff Currieはいう。
・彼はさらに、需要増と既に減少している高コスト産油者の生産減少により、石油市場の供給過剰は来年後半には再びマイナスに転ずるだろう、と言っている。
・また、このリバランシングが協調減産へのOPECの呼びかけを支えるものになるだろう、としている。
・「そのような生産削減は、高コスト原油生産者を横に押しやり、市場シェアの拡大につながるだろうー市場のVolatilityも減少させるだろう」
・高いインフレが消費を減少させ、経済成長を妨げることになるかも知れないというエコノミストは警告しているが、GSはこのように主張する。
・「高油価が成長を妨げるだろうと多くのエコノミストは警告するが、世界経済は油価が100ドル以上となっても成長したし、2014年の価格下落が成長の追い風になるだろうという期待にも関わらず、今年初めに油価が25ドルに向かって下落したとき、世界経済は著しく減速した。1970年代の経験から、石油価格が上昇すると世界の富が、貯蓄率の低い先進国市場から貯蓄率の高い新興国市場に移転し、新興国市場の消費は比較的低い傾向にあるので、結果的に低い成長率につながるし、石油価格が下落すると反対のことがおこる、という信念が(エコノミストたちの)心の奥底に強くあるからだ」
なるほど。
この最後の指摘はじっくり考えてみる必要があるなぁ。
それにしても11月30日のOPEC総会、どのような「見目麗しい」筋書きを事務局は用意しているのだろうか?
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月22日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。