医療的ケアが必要な障害児は、親と一緒に過ごすべきで保育は必要ない⁈

音喜多 駿

こんにちは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

昨日、障害児保育園ヘレンを営む駒崎さんのツイートが大きな反響を呼んでいました。

事実だとすれば(事実でしょうけど)、これほどひどい話はありません…。

しかしながら、都内における障害児保育はいまだに非常に脆弱な状況にあり、保育事業の実行部隊である区市町村(の一部)の意識はこのレベルだというのが現実なのでしょう。

以前から繰り返し問題提起をしてきたところですが、通常の保育所や幼稚園では、軽度でも知的や発達の障害児は「うちでは対応できない」と断られるケースが大半です。(区立幼稚園ですらも!)

参考:閉ざされる障害児を持つ親たちのキャリア…「児童発達支援事業」と障害児保育を考える
http://otokitashun.com/blog/daily/10881/

そこで頼みの綱となる児童発達支援所ですが、子どもを預かってくれるのは長くて10時~14時のおおむね4時間程度。短い日は2時間となっています。

これでは障害児を持つ親がフルタイムで働くなど、夢のまた夢です。

つまり多くの保護者(ほとんどの場合母親)は、子どもに障害が発覚したその瞬間にキャリアを閉ざされることになります。

ではなぜ、こうした事態になっているのでしょうか。

これは障害児を預かるという物理的・技術的な問題以前に、冒頭のツイート内に出てくる職員のような行政サイドの

「保育と療育は別物」
「障害児を長時間、保育所に預けるのはいかがなものか」

という姿勢・考え方(思い込み)に大きな原因があると思われます。

平成26年11月20日には、実際に私が厚生委員会でこのようなやり取りをしています。

〇おときた委員

(前略)現時点で重症心身障害児が利用できる支援のメニューは、本人の医療的育成を目的とした療育であるのが前提ということかと思います。

つまり、あくまで施設などを利用するのは障害児本人の療育のためであって、休養を図るレスパイトなどの一部事業はあっても、保護者の就労などを支援することではありません。もちろん障害児本人のことを考えれば、この制度思想は理解ができます。

しかしながら、現在は家族のあり方、働き方も大きく変化をしており、特にここ東京都では共働きでないと家庭を維持することがだんだんと難しくなってきています。就労などを継続できなくなった家庭は、その経済的、心理的負担から離婚、一家離散してしまうケースもあると耳にしています。

子供のためを思っての療育政策が家族への支援という考えを排除することで、結局はその子供のための家庭環境を壊してしまうことが現実に存在をしているのです。

通常の保育サービスや障害者施設を利用できない障害児に対しては、その療育も、就労など家族への支援を視野に入れた形で提供するべきではないでしょうか。

〇高原障害者施策推進部長

(前略)児童発達支援等の障害児支援の事業においては、当然に利用者とは親ではなくあくまで児童本人であり、家族への支援も児童本人の成長発達の観点から、例えば利用時間なども、その障害特性や病状管理等に非常に慎重な対応を要するといった心身の状況等を踏まえて行われるのは当然であります。

平成26年11月20日厚生委員会質疑より)

「子どものため」といえば聞こえは良いですが、質問文の中にある通りこれは明らかに行政の怠慢です。

「療育と保育は別物」という縦割り行政の狭間に落ちる親たちが、経済的・精神的に追い詰められることになれば、結果として子どもたちの健やかな発達を阻害することになってしまいます。

こうした脆弱な行政の領域をカバーするために、駒崎さんたちが民間の立場から障害児保育園の立ち上げに尽力しているわけですが、それに対する理解・支援すらする気がないのでは話になりません。

一方で都は、同委員会でこのようにも答弁しています。

〇おときた委員

(前略)とにかく現実に発生しているのは医療的ケアを必要としている障害児とその家庭が、保育というサービスから事実上排除されているという問題です。行政や事業者側がどれだけ療育だと考えてサービスを提供していても、それを事実上の保育として利用して、就労しなければならない保護者たちが現実に存在しています。

これは制度と現実が乖離をしている極めていびつな状態ではないでしょうか。このような状態を解消し、どんな障害を持っていても、持っていなくても、ひとしく保育サービスが受けられるよう東京都はあらゆる手だてを尽くすべきです。

この課題に対して、東京都はどのように対応していかれるのかを伺います。

〇手島少子社会対策部長

医療的ケアを必要とする障害児が保育サービスを利用するに当たりましては、障害の程度やケアの内容、施設側の受け入れ体制、対応能力等に鑑み、保育の実施主体である区市町村がそれぞれ個別の実態に応じて慎重に判断をしております。

都におきましては、障害児に対する保育サービスが適切に提供されるよう、区市町村が行う職員研修への補助や、都独自の子育て推進交付金、保育所における障害児の受け入れに必要な施設改修経費補助などにより、区市町村を支援しております。

また、障害児に対する指導経験がある指導員等が保育所を訪問し、専門的な支援を行う保育所等訪問支援が平成二十四年度から児童福祉法に位置づけられ、現在、十区市の十一事業者によって実施をされております。

都といたしましては、こうした取り組みにより、今後とも区市町村を支援してまいります。

「障害児に対する保育サービスが適切に提供されるように(制度面から)支援」と述べていますが、残念ながら実態としては冒頭のような状況が残っており、甚だ不十分な状態であると言わざる得ないでしょう。

障害者差別解消法も施行され、2020年にパラリンピックを控える都においては、こうした分野に一層の注力をしていくことが欠かせません。

また小池百合子知事は、都知事選の最中に実際に「障害児保育園ヘレン」を視察し、保育と療育分野の課題について認識されていると思います。

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参考:知事選でさらに深化する政策論争!待機児童は、「空き家MAP」のオープンデータ化で解消に近づく
http://otokitashun.com/blog/daily/12118/

これまでの都政では不十分であったこれらの姿勢や対応の改善については改めて、都があらゆる観点から指導力を発揮するように求めていきたいと思います。

それでは、また明日。