とかく会社とは理不尽なものだ。様々な制約のなかでビジネスパーソンは成果を出さなければいけない。「上司になんでペコベコ頭を下げなければいけないんだ。やってられない」というような経験をした人も少なくないはずだ。
起業家、経営コンサルタントとして活動し、『起業1年目の教科書』(かんき出版)の著者でもある、今井孝(以下、今井氏)は次のように述べている。
■頭を下げるの本当の意味とは
「私の周囲を見てみると、できる人、結果を出している人ほど腰が低いです。すごい人になればなるほどその傾向は強くなります。すごい人ほど偉そうにせす自分を正当化しません。お会いするたびに『いつもありがとうね』『勉強させてもらってます』とか声をかけてくれます。こちらが恐縮してしまいます。」(今井氏)
「本気でやりたい仕事であれば、上司に頭を下げることくらい平気なはずです。頭を下げたくないのは、そこまでやりたくない仕事だということなのかもしれません。」(同)
――そういう人を見ると、どう感じるだろうか。今井氏は、素直に頭を下げる人を見ると、「相当自信があるんだな」と感じるそうだ。自分に自信があるなら、他人に頭を下げるのは何でもないということになる。
「男性の起業家には、『オレはスゴイ!』とことを周りに認めさせたくて起業するパターンが多いように感じます。自分に自信がないため、周りからの承認が欲しくてたまりません。自分の失敗を認められないし他者に素直に感謝できません。」(今井氏)
――相手を批判して、SNSに偉そうなコメントを書いてみる。相手を下げることで自分の価値を高く見せたい人はたしかに多い。
「こういった対応をしているとき、本人は『どうだ、鋭い意見を書けるオレはスゴイだろ』などと思っているのですが、周りからは逆にスゴイ人とは思われません。『この人、こんなことで小さい人だな』と思われます。」(今井氏)
「なんとなくツンツンして怖そうなイメージがある人は、自信があるからではなく、自信がないからそうしているのです。もし、本当に認められたいのであれば、人に感謝し、時には謝罪をするような人間にならなくてはいけません。」(同)
――これは「自是他非」という格言にも書かれている。自分が是で、他人が非であり、自分が良くて他人が悪いという考え方だ。仕方がないから他人に頭を下げる。頭を下げなかったら自分の立場を悪くするからである。「頭を下げる」とは自己都合の行為なのだ。
頭を下げながら人を見下げている(見下している)こともよくあるだろう。今井氏は「人に感謝し、時には謝罪をするような人間にならなくてはいけない」と述べているが、これは人の本質を言い当てた言葉ともいえる。
■自分自身が満たされるためには
――また、ビジネスの目的についても分かりやすい表現があるので紹介したい。この部分はビジネスの根幹にあたるので自分なりに租借してもらいたい。
「誰かに認められるより、自分が自分を認めることのほうが先です。どんな自分であれば、自分を認められるでしょうか?結果が出てなくても、周囲からバカにされても、他人のために一生懸命になって働いている自分ではないでしょうか。」(今井氏)
「だからこそ、認められるために起業するのではなく、本気で他人の役に立ちたいという気持ちでビジネスに取り組んでみてください。」(同)
――「他人の役に立ちたいという気持ち」は「自是他非」を体現するものではないだろうか。収入が増えても、自由に時間が使えても、多くの人に影響を与えることができても、他人の役に立たなければ自分自身が満たされることはないだろう。
「社会の中で自分の役割を持ち、ほんの少しでも他人に貢献している実感を持てたなら、とても幸せなことだと思います。そして、自分を自分で認められ、役割を与えられていることに感謝できていれば、自然にビジネスは上手くいきます。」(今井氏)
本書は、シンプルに起業の本質を知りたい人にとっては参考になると思われる。
尾藤克之
コラムニスト
アゴラ出版道場、第1期の講座が11月12日(土)に修了しました。12月からは毎月1度のペースで入門セミナーを開催します(次回は12月6日開催予定。)。
なお、次回の出版道場は、来春予定しています。