株式会社致知出版社から『修身のすすめ』という本を上梓しました。明後日8日より全国書店にて発売が開始されます。
本書は、私が折に触れ書き溜めていた、世に起こる社会現象や様々な人の主張を聞いたり見たりした時の雑感を一冊の本に纏めたものです。
十年以上の間に夥(おびただ)しい数の雑文が溜まっており、そこからどういった方針で取捨選択するかが本書の価値に非常に関わるわけです。その方針は、昨今の我が国の内憂外患の根本原因が私の従前の持論である戦後の教育にあるとの考察に基づくものとしました。即ち教育が単なる知識や技術の習得に偏し、世渡りの方便と堕してきた結果が、徳性の高い英傑の士の払底(ふってい)に至ったと私には思えるのです。
江戸時代の日本人の高度な精神性や道徳性が、いかに齎されたかと考えるに、朱子学が教育の中心に置かれ、教養の根幹となってきたことに起因すると思われます。
当時は『小学』『中庸』『大学』といった中国古典が各藩の藩校や寺子屋で教科書として使用されていたのです。『小学』は「修己(しゅうこ)修身の学」とされ、能力と人格の両面において基本的なことを学ぶ書とされていました。『大学』は「修己治人(ちじん)の学」とされ、人の上に立つ者の心得を学ぶ学問とされていました。『中庸』は調和の学であり、創造の学でした。
戦前まではこうした学問を通じて日本人は徳性を磨いてきたのです。ところが戦後は古い封建思想だとされ、こうした中国古典から学ぶ人が殆どいなくなりました。
私は、人間力を磨く上で、こうした学問は必須であり、こうした教えが一般の人にも分かり易い内容で古典と同じような教育効果を挙げられないかと思案し、先ほどの古典の内容を私なりに消化したものを現代風にアレンジしたのが本書であります。甚だ大胆な試みであることは重々承知ですし、私自身もそのでき栄えに不備不満が残るものではあります。敬(つつし)んで大方のご教示を請うところであります。